日日是女子日

細かすぎて役に立たない旅行ガイド

再びフランスへ。美食という名の胃袋酷使の旅。

と、大そうなタイトルで始まったのだが、「リヨンと言えばポール・ボキューズ」みたいな面々に最初に断っておくと、そんな上等な店には一件も行っていない。せいぜい庶民の贅沢レベルである。(ついでに、このエントリでは機内食とラウンジ飯しか出てこない。)

 

ストの嵐吹き荒れるフランスへ

さて、ゴールデンウィークの旅行で色んな意味でフランスにノックアウトされ、また行きたいような、もう2度と行きたくないような複雑な感情を持つに至った我々だが、その半年後、フランスへの旅立つに至ったのは今思えば思考停止としか言いようがない。

そもそもの発端は、たまたま夫が静岡発パリ行き(ただし上海経由)の安いチケットを発見したことに由来する。ハイシーズンにも関わらず1人往復7万円(税金、サーチャージ込)。恐ろしく安い。例え静岡に住んでいなくとも、我が家の家訓「安いは正義」で言えばコレは正義も正義、大正義巨人軍である。

よく考えると静岡空港発というのもなかなか便利そうである。静岡空港までは車が便利なようだが、首都圏からは高速を使えばそれほど遠くもない。駐車場は何日停めてもタダである。年末年始の混雑の中、羽田なり成田まで重い荷物を引き摺って行くよりは、家の前から車で出た方が楽なのではないか。

年末年始にとりあえず海外に行きたいだけの我々は、行きの手段だけでフランス行きを決めた。

そういえばパリはこの前行ったし、メインはリヨンにするか。深く考えず、サクサクと以下の旅程に決まった。

12月27日 飛行機(富士山静岡空港ー上海浦東空港、中国東方航空

12月27日 飛行機(上海浦東空港ーパリCDG、エールフランス

12月28日 高速鉄道(パリーリヨン、TGV

     ※リヨン4泊

1月1日  高速鉄道(リヨンーパリ、TGV

     ※パリ1泊

1月2-3日 飛行機(パリCDGー上海浦東空港、エールフランス

     ※上海1泊

1月4日  帰国     

 

これが旅行の約3ヵ月前である。

 

それなりに楽しみに待っていたところ、年末も差し迫った12月、マクロン大統領の年金制度改革に反対するストライキがフランス国鉄中心に始まった。ちなみに、我々がパリーリヨン間で乗車予定のTGVはフランス国鉄SNCF)の新幹線である。

出発日が近づいてもストの嵐は止む気配はなく、インド旅行直前の印パ関係悪化韓国旅行直前の日韓関係悪化に続き、3回連続でニュースの現場にコンニチワする旅となってしまった。不謹慎だが多少楽しみでもある。

 

 

富士山を背に日本を発つ

さて、そうして訪れた12月27日、旅行の幕は切って落とされたのである(大袈裟)。

この日は平日ということもあり、東名高速はガラガラで静岡空港まで富士山を眺めながらの快適なドライブを楽しんだ。何しろ休日ドライバーと「わ」ナンバーがいない。ペーパードライバーの謎の動きに混乱させられることもなく、車間の意思疎通がスムーズである。まあ、スタート地点にも立っていないこの段階では、これくらい順調に進んでくれなきゃ困る。

 

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目の前には雪の富士山。地吹雪がここからも見え、すげえ寒そう。

 

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いい天気。空港周辺は一本道でわかりやすい。

 

さて、静岡空港は正式には「富士山静岡空港」という。山梨県民がどう思っているのか気になるところだが、まあ良い。静岡名産品がたくさん売っていたり、カードラウンジでお茶が飲み放題だったり、空港というよりパーキングエリアのような雰囲気が漂う。


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カードラウンジのお茶。当然静岡茶かと思いきや、産地が書いていない。Webページにも「茶処静岡らしい豊富なお茶」としか書いてないので色々お察し。


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富士山をバックに東方航空を眺む。

 

この後、紆余曲折すったもんだはあったが、なんとか無事に離陸した。本題ではないので詳細は省くが、静岡発で安いチケットが手に入るなら、また使っても良い(上から)。

 

 

上海で汗をかき、尻を洗う。

我らが中国東方航空便のエアバス321機は、上海浦東空港にコツン、と着陸した。イメージに反するソフトランディングである。

上海で乗り換え、我々はパリに向かうのだ。

しかし、その前に浦東空港でやらなければならないミッションが2つあった。ラウンジでシャワーを浴びることと、そして上海ーパリ便で通路側の座席を確保することである。パリまでのフライト時間は長いため、どちらも超重要である。

座席に関しては、我々は東方航空経由でエールフランスの激安チケットを購入していたため、Web上で座席予約が出来なかった。そのためか、3人並びの窓側席と中央席という、長距離便では絶対に避けたい座席が選ばれてしまっていたのだ。日本のチェックインカウンターでは「システム上、座席変更ができません」と言われてしまった。

座席変更は制限区域外のエールフランスのカウンターに行く必要があり、わざわざ中国国内に入国する必要があった。このあたりの経緯は長くなるので後述するが、とにかくカウンターで美人スタッフに掛け合って、無事通路側座席を2つゲットした。美人スタッフは長い睫毛を揺らしながらラウンジへのインビテーションも書いてくれた(プライオリティ資格を持っているので)。

そうして再び出国した。うろつき回って汗だくである。

とりあえず、ラウンジでシャワーを浴びなければ。

 

浦東空港のビジネスラウンジは、JALエールフランスだけ別になっている。恐らく口うるさい日本人客と面倒臭いフランス人客をまとめて面倒見てしまおうという魂胆ではないかと思われる。(やれスタッフが無愛想だの、やれ便所が汚いだの、自分も含め日本人の要求はやたらうるさいとオモイマスヨ。)

髪の毛一つ落ちていない清潔なシャワーで尻を洗い、そこそこ美味しいラウンジ飯を摂取し、オヤツにペンギンちゃんのマシュマロをいただいているうちに時間となった。

 

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ラウンジのシャワールーム。さすがにまともなクオリティ。タオルも清潔。

 

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ラウンジ飯。まあ悪くない。やたらとタピオカ入りココナッツミルクを猛プッシュされたが、味は別に普通である。

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ペンギンちゃんのマシュマロ。


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突然スタッフが配り始めた冷凍ピザ。アメリカ系航空会社の客もいないのに、すごいホスピタリティである。

 

さて、我々が乗るのは2階建てのレア飛行機、エアバス380である(座席は1階部分だけどな)。ボーディングブリッジから見ると、窓が2列に並んでいて盛り上がる。

が、乗ってしまえば普通のジャンボジェット機である。

エールフランスは2度目である。機内食は普通に美味しいのだが、朝食が甘党仕様である。「パン2種、フレンチトースト(甘い)、フルーツ(甘酸っぱい)、ヨーグルト(甘い)、オレンジジュース(甘い)、ホットチョコレート(甘い)」と、パン意外全部甘いラインナップである。ちなみに、もちろんジャムもついてくるので、やりようによっては全て甘いものにもできてしまう。逃げ場がない!

 

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機内食その1、夜食。コールスロー、パスタ、チーズ、ココナッツムース、普通に美味しい。


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機内食その2、朝食。甘党なので実はけっこう好きな感じである!

 

座席を通路側に変更できたおかげで、機内はかなり快適に過ごせた。珍しく熟睡でき、あっという間にパリに着いた。

 

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 CDGのあの有名なグルグルターミナル。

 

シャルルドゴール空港からリヨン駅(パリにあるけどリヨン駅)まではバスである。車内には日本人が多くおり「あー、風呂入りてぇ。」などと日本語が聞こえてきた。我々は上海で既に尻を洗っており、優越感に浸りかけたが、瞬間、我々が単に無駄に遠回りしているだけであることに気づいた。日本からの直行便に乗った人たちと最後に風呂に入ってからの経過時間にはそれほど差がない。優越感も何も彼らの尻と我らの尻は同程度の汚さである。

 

リヨン駅の前では、ところどころにマイクを持ったレポーターがいた。朝のニュースでストの様子を伝えようというのか。ニュースで見たフランスに自分がいると思うと、これから鉄道に乗ることも忘れてワクワクした。

 

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早朝のリヨン駅。リヨンに向かう高速鉄道が発着する。

 

駅中のピエール・エルメでいそいそとショコラショー(ホットチョコレート)を買い、ベンチに座って電車を待った。駅のホールにはピアノが置いてあり、薄汚れたバックパッカーがやたらと上手く「パイレーツ・オブ・カリビアン」のテーマを弾いていた。せっかくなのだから、もう少しパリっぽい曲を弾けば良いのにと思うが、そういえばパリっぽい曲って何だろう。「パリは燃えているか」など弾かれてもシリアス過ぎるだろうか。

 

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ピエール・エルメのショコラショー。人によっては粉っぽく感じるかもしれないが、個人的には濃厚で超うまい。おかわり希望。

 

運良く、我々のTGVはストの影響もなく時間通りに発車した。

さぁ、いよいよ美食の都、リヨンである。(タイトル負け甚だしい終わり方)

 

続く。

 

 

※上海浦東空港での紆余曲折(別に大して興味もないだろうが、一応下に書いておく。)

ボーディングブリッジを降り、東方航空の乗り換えカウンターに着いた。既に深夜のため10人ほど立てそうな幅のカウンターにスタッフは1人しかいない。前にいたスタッフに座席を変更したいと言うと、とりあえず並べと言われた。順番待ちの行列は長かったが「スカイプライオリティ」資格を大いに活用し、グイグイ進んでくる中国人を押し除けてカウンターにたどり着いた。

「席を変えてほしいんですけど」と静岡で発券したチケットを見せると、グランドスタッフは不機嫌そうに「ここは東方航空のカウンターよ!エールフランス便の席なんて知らないわ!(意訳)」と言い終わるや否や「ネクスト!!」と言い放った。惚れ惚れする仕事のスピード感(皮肉)。東方航空とのコードシェア便であっても、エールフランス機材の座席は変更できないということらしい。席を変えるにはエールフランスのカウンターに行かなければならないようだ。

しかし、周りを見渡してもそれらしきものはない。離れたところに立っていた空港スタッフに聞くと「エールフランスのカウンターは、エスカレーターを降りてターミナル1に行って!」などと言う。エスカレーターを降りた先がターミナル1かと思って行ってみると、ターミナル間移動の無料地下鉄(何ていう名前なんだろう)のプラットフォームだった。これまで何度も浦東空港を使ったが、こんなものに乗った記憶はない。設備もどことなく真新しく、拡張された離れ小島だろうか、と思うも空港全体の案内図もなく、浦東空港のホームページにもなく、結局最後までよくわからなかった。

 

ターミナル1に来てはみたものの、あるのは東方航空のカウンターだけで、エール・フランスのカウンターなどどこにもない。空港スタッフに聞けば、エールフランスカウンターは一度入国しなければならないらしい(この段階ではまだ中国国内には入国していなかった)。確かに、浦東空港では外国の航空会社の乗客は入国せずに乗り換えられない仕組みになっており、考えてみれば制限区域内にカウンターなどあるはずがないのだ。

まだ時間もあるため、入国してみることにした。入国して、エールフランスのカウンターに行って、それでも通路側座席に変更できないと言われれば、フライト中窮屈でも諦めがつく。

入国審査では、私の指紋を読み取ると同時に端末がフリーズし、普通なら30秒で終わる審査に5分以上かかった。ふふふ、私の指紋にはウイルス・コードが組み込まれている。私は日本から送り込まれた人間サイバーテロ装置なのである。(もちろん嘘)

 

無事、入国審査を通過した後、パリまでスルーチェックインではあるものの、バゲッジクレームで荷物が出てこないことを念のため確認した。以前、浦東空港の乗り換えでスルーのはずが、我々の荷物が何故かバゲッジクレームの床に置かれていたことがあったのだ。

バゲッジクレームにはデジタル掲示板が設置されており、画面にはなぜかWindows XPのあの草原の写真が映し出されていた。XPは大昔にサポートが切れており、浦東空港のセキュリティ管理に不安を禁じ得ない。いや、アップデートしろよ。(まさか入国審査の端末にもXPを使っていたりしないだろうな?)

 

エールフランスのカウンターに着いてみると、まだオープン15分前であった。並んで待っていると、向こうにデビアスの広告が見えた。そういえば、バブル期はよく「ダイヤモンドは永遠の輝き」とかいうCMが流れていただが、長いこと見ていない。

 

そうして無事に通路側座席を確保したのである。こうして書いてみると大したことがないように見えるが、浦東空港は広いので地味に大変である。私グッジョブ。

 

旅の終着地、パリ編

2019年5月4日、パリへ。

タリスでケルンを後にした我々は、ドイツのあまりの居心地の良さにより、すっかり旅を舐めきっていた。

「やっぱり最初にインドとかロシアに行っちゃうとさぁ、先進ヨーロッパ諸国はパンチがないよねー。」などとわかったようなことを言い合い、おフランスなどもはや消化試合くらいの勢いである。

 

そうして緊張感の抜けきった我々を乗せて、赤い高速列車はヌルリとパリ北駅に停車した。

電車を降り、やれやれ隣のDQN同胞ともおさらばだぜ、などと呑気に考えながらプラットフォームに降り立つと、何やら地面が汚い。何かのシミやら吸殻などで不潔なのである。チリ一つなかったドイツとは大違い。

嫌な予感を抑えつつ地下鉄駅に向かった我々は、そこで「どこのヨハネスブルクか」と思わんばかりの治安の悪さに驚愕した。無論、事前に北駅周辺の治安が悪いことは調べてはいたのだが、何しろ完全に油断していたのである。

とにかく人々の柄が悪い。

タダ乗りするために、自動改札で前の人にピッタリとついて通り抜けようとする輩や、それどころか堂々と自動改札を飛び越える輩までいる。

このような犯罪ともつかないような軽犯罪は氷山の一角に違いなく、確実に、もっと悪いことをしている輩もウジャウジャいるはずだ。ゴキブリは、1匹見かけたら30匹は隠れているのだ。

スーツケースを引き、券売機を探して辺りを見渡す我々はいかにも旅行者然としており、肉食獣が闊歩するサバンナに放たれた家畜のようなものである。動揺を抑えつつ券売機で10枚綴りの回数券を購入し、後方に警戒しながら自動改札を通り抜けた。

 

プラットフォームは地下にある。そのため、地下鉄に乗るには地下に降りなければならないのだが、正直、階段の前で「イヤだ、降りたくない」と思った。階段は不潔で、降りた先も薄暗く、ヤバそうな気配がする。

実際プラットフォームに降りると、そこにいたヤバそうな白人たち、おっかない黒人たちが皆さりげなくこちらを見た(気がした)のでギョッとした。我々のような呑気な黄色人種は1人もいない。

なんでこんなところに来ちゃったかな。居心地の悪い気持ちを吹っ切るように地下鉄4号線に乗る。ふと向かいに立つ移民らしい男性が、こちらを値踏みする様に凝視しているのに気づいた。こちらが目を合わせてもそらさない。大丈夫、我々は貧乏臭い服を着ている。カモにはならないはずだ。

そのうち、急に宿周辺の治安が心配になってきた。北駅から地下鉄で1本で行けるモンパルナスに宿をとったのだ。ネットでは治安が良いとの評判だったが、地下鉄で16駅越えたくらいで変わるものだろうか。東横線は端から端まで行ったところでシャレオツラインであり、路線を変えない限り雰囲気など変わらないのではないか。

しかし、幸い数駅過ぎると急に乗客の様子が変わってきた。空気が緩み、なんとなくお上品な感じの人々が増えていく。まだ油断はできないが、ヤマは越えたらしい。女子1人旅で来てたら泣くところであった。

 

モンパルナス駅周辺は、無駄にたまろっている輩がいるわけでもなく、評判通り割と治安が良さそうである。歩道にはヒビが入り、吸殻などで散らかってはいるのだが。

宿はホテル・コンコルド・モンパルナス。空港行きのバス「Le Bus Direct」のバス停の目の前にある。

 

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ホテルのエレベーター前には縞々のペンちゃんが。

 

緊張して疲れたのか、腹が減ってきた。コスパ最高、とアタリをつけていたブイヨン・シャルティエへ。

ドアを開けると、身長2メートルほど、体重は100 キロを優に超えているであろう強面の紳士が颯爽とお出迎え。ガードマンも兼ねているのだろう。評判通りの人気で、店では既に数人が順番待ちしていた。列の後ろに並ぶようデカい紳士に指示され、転がっていた新聞を眺めつつ順番を待った(もちろん仏字新聞、もちろん読めない)。既に夜10時も近いのに我々の後からもどんどん人が入ってくる。パリっ子は宵っパリなのである(パリだけに!)

 

それほど待たずに華奢なギャルソンが我々を席に案内してくれた。狭い店内はかなり活気があり、パリッと制服を着こなした(パリだけに!)ギャルソンがキビキビと優雅に動き回る様は、正直これまで行ったどこの国にもなかった感じである。料理のサーブも早く、サービスが行き届いている。さすがは本場。さすがはパリ。

 

注文は、テーブルクロス代わりのザラ紙に書かれるシステムで、端末でポチポチやられるより色気がある。こういうのんで良いのだ。

 

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字が汚いのもソレっぽい。

 

注文したのは、夫は前菜にパテ・ド・カンパーニュ(写真なし)、メインにカモのコンフィ、デザートにババ。私は前菜にキャロット・ラペ、メインはステーキフリット(懲りずに肉と芋再び)、デザートはモンブランである。合わせるのはピノ・ノワールを使った一応フランス産の謎ワイン。値段なりにカジュアルな感じではあるが、どれも旨い。なんというか、その値段で可能な範囲で、ものすごくちゃんと作っている味である。美味しくないと商売できない土地で賑わっているだけのことはある。

すっかり満足してホテルに帰った。

 

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カモ。美味しかったそうです。


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ステーキフリット。ドイツと違い、肉が程よい大きさ!普通に美味。


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ババ 。要はラムを染み込ませたブリオッシュ。酔っ払いそうだが旨い。

 

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モンブラン。なんとマロンペーストにホイップクリームを載せただけという、硬派すぎるデザートである。

 

 

翌日は憧れのベルサイユへ。

朝食はカフェでクロワッサンとオレンジジュースを。クロワッサンはまあ旨いんだけど、最近このくらいなら日本でも食べられる味である。日本のパン職人の努力を思う。胸熱。

 

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クロワッサン。まあおいしいけども。

 

そうしてノンビリ朝食を食べていたら、うっかり乗るはずの電車を逃し、11時からの優先入場に30分ほど遅刻してしまった。

普通に並べば2時間はかかるところを待ち時間なしで入るために1人40ユーロも払っている。メールには「遅れたから無効」とも読めなくもない記載はあったが、ここはなんとか交渉したいところである。もちろん遅れた我々が悪いことなど百も承知だが、例えば時間を守らないことで有名な某国の観光客など絶対に遅刻してるに違いなく、うまいこと次の回に紛れ込ませてくれるはず、という目論見もあった。

優先入場の窓口に行き、日本人的に「遅れてごめんなさい」と言いたくなるところをグッと堪え、涼しい顔でシレッとバウチャーを出す。窓口のオネエさんにフランス訛りの英語で時間がどうのこうの、何かを言われたが、正確には聞き取れなかった。なんですって?という顔をしていると、日本語を話せるお姉ちゃんがやってきて、次の回に入れてくれると言う。もう一悶着あるかと思えば案外優しい。「これが、ベルサイユ・シロとベルサイユ・ニワのニュウジョウケンです。11時45分にあそこの柱の前にいてください。」ベルサイユ宮殿と庭園ね、フムフム。

ここらで尿意が限界に近づいたので、隣のマックでトイレを借りる。もちろんタダでトイレを使わせてくれるような気前の良さはない。何か購入するとトイレのロック解除コードがもらえるのである。周辺には他にトイレはなく、ものすごく儲かりそうなシステムである。あまりの注文の多さに店員が全然追いついておらず、結局我々は購入したはずのカフェラテを受け取る前に集合時間が来てしまったので諦めた。まあトイレ代である。別に良い。

集合場所で待っていると、名簿を持った陽気な女子が現れ出欠を取り始めた。我々の名前を呼ばれた際、本当にウッカリと指揃えて手を挙げてしまったのはウッカリ極まりない愚行であった。

ズラリと並ぶ観光客を尻目に優先レーンから入場した。セキュリティチェックがあるので、優先レーンであっても30分ほどは待たされた。ベルサイユ恐るべし。

中に入ると音声ガイドを手渡され、後は完全自由行動である。絢爛豪華ではあるだが、既にエルミタージュで麻痺しているのでそれほどの感動はなかった。まあ、装飾や調度品はエルミタージュよりも洗練されて垢抜けてるのは確かである。たしかに金はかかっている。こりゃフランス革命も起きるわ。

仕方のないことではあるが、何しろ激混みなのが興醒めではある。とはいえ、かなり広いので入口から遠いトリアノンまで行けばかなり空いてくる。

庭園では、小銃を構えた軍人が数人グループでパトロールしており、中には女性も1人いた。いわば現代のオスカル様である。麗しい。

 

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鏡の間。シャンデリアを見ると「地震来たら危ないな」とつい思ってしまうワタクシである。


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教科書で見たナポレオンの戴冠式のアレ。思った以上に大きく、壁一面コレである。


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リシュリュー卿。三銃士の悪役で有名な。


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ベルサイユ・ニワ


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噴水には羽根を切られた飛ばない白鳥が。なんかソレっぽい。


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途中で腹が減ったのでパニーニを。

 

 

さて、ベルサイユを満喫した我々は、パリに戻って散歩である。

歩き疲れて入ったのは、マレ地区のブルゴーニュ料理屋、オ・ブルギニオン・ド・マレ(と読むのか)である。

夫は牡蠣、アンドゥイエット(豚の小腸にモツ類を詰めたもの)、ババ 、私はウフ・アン・ムーレット(赤ワインのソースを使ったポーチドエッグ)、ブッフ・ブルギニオン(牛肉のブルゴーニュ煮込み)、デザートにチョコレートシューを注文した。

前日の店よりもやや高価であり、味も洗練されていた。ここでもギャルソンの優雅さは健在である。昔のフランス旅行といえば、日本人はレストランで差別されて相手にされない等の話をよく聞いたものだが、全くそんなことはない。親切丁寧て非常に感じの良いサービスである。あれだけ移民が増えてくると、観光で来ている大人しい日本人になど構っている余裕がないのだろう。

 

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前菜の牡蠣。量が少なかったらしい。


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ウフ・アン・ムーレット。赤ワインの旨味が米に絶対合わない感じで美味。(もちろんパンに超合う)


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アンドゥイエット。ホルモン好きにはたまらないヤツ。


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ブルゴーニュ煮込み。見た目よりあっさりしており、優しい味。赤ワイン味が前菜と被ったが、注文する価値はあった。


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ババ 。盛り付けが洒落ている。

 

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シュー。チョコレートソースが激甘。本気で甘い。

 

お腹も心も満たされた我々は、腹ごなしにセーヌ川沿いを散歩した。景色が贅沢である。


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木造部分が焼失したノートルダム大聖堂


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映画「ポンヌフの恋人」で有名なポン・ヌフ。和訳すれば新橋。


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ルーブルのアレ。一応通りかかったので。

 

ホテルに戻るべく、地下鉄駅に入ると、深緑の制服を着たガチムチのおじさんが愛想よく「ボンソワ〜」と話しかけてきた。制服を着ているとはいえ、着こなしがだらしなく(上着を半分脱ぎかけていた)、何か怪しいので無視すると今度はドスの効いた声で「ボン!ソワッ!」とこちらを睨みながら怒鳴られた。そして切符を見せろという。要は、あまりに無賃乗車が多いため、検札をしていたのだ。「ボンソワ」とはフランス語で「こんばんは」の意味らしいが、こういう使い方もあるんだな、と妙に関心した。

 

 

さあ帰るぞ日本へ。

翌朝、ホテル前から空港シャトルバスに乗り込んだ。疲れが出たのか眠りこけてしまい、あまり覚えていない。

 

空港に着き、アエロフロートのチェックインカウンターに向かった。安かったのでモスクワ経由のチケットを買っていたのである。

しかし、出発3時間前にも関わらずオープンしていない。時間潰しに別ターミナルの郵便局で絵葉書を出して戻ってきても、まだ閉鎖したままである。

カウンターにスタッフはいるのだが、ずっと端末を操作していたり、上司と思われる男性と話し込んでいたりする。ラチが開かない感じである。

仕方なくベンチに座って様子を見ていると「日本の方ですか?」と話しかけられた。旅慣れた風の感じの良い男性で、日本から娘に会いに来てモスクワ経由で帰るという。と、男性は気になることを言い出した。

「ついてないですね、モスクワで事故なんて。」

聞けば、我々が経由地として向かう予定だったモスクワ、シェレメチェボ空港で飛行機の炎上事故があり、空港が封鎖されているとのことであった。なんとも痛ましい事故である。亡くなられた方々のご冥福をお祈りする。(大部分がロシア正教徒か無宗教だろうけど)

しかし、我々は今日中に帰国しなければ仕事に支障が出る。とりあえず、まだ疎らにしか人のいないチェックインカウンターに並んでみることにした。しばらくしてオープンしたが、そこで得られたのは「飛行機がキャンセルになったので、チケットカウンターで手続きをしてください」という案内のみであった。

こういう時、順番は早いほど良い。チケットカウンターにダッシュし、前から2番目の位置をゲットした。それでも当日の便には空きがなく、翌日のフライトになってしまった。

チケットカウンターの疲れた顔をした係員は、深い溜息を何度も突きながら、空港近くのINNSIDEという紛らわしい名前のホテルを取ってくれた。ランチ、ディナー、朝食付きである。

ランチはブッフェ式で、鶏肉(パサパサ)、芋、パンとブラウニーのみという粗末さ。しかもコーヒーマシンが故障中で、飲み物はタップウォーターのみである。ちなみに、ディナーも全く同じラインナップであった。タダで取ってもらったので文句は言えないが、普通にお金を払って泊まっている客は何も文句を言わないのだろうか。

暇なので空港に戻り、ターミナル1をグルグルしたあとはホテルバーでビールを飲みまくった。

夜中、Skypeで会社に電話をかけ、もう1日休みをもらった。優しい上司は、気をつけて帰ってきてくださいね、と言ってくれた。

翌朝は同じくブッフェ式の朝食ではあったが、チキン、芋、パンに加えて品数も多く初めて満足に食事を取れた。思うに、朝食だけ真面目に作り、昼夜は朝の残り物で切り盛りしていたのだろう。企業努力というやつだ。

なんとなくモヤモヤしながら、再び空港へむかった。

 

 

今度こそ帰るぞ日本へ。
ところで振り分けられたはエールフランスの直行便、しかも席はプレミアムエコノミーである。もちろん事故は痛ましいのだが、不謹慎ながらも少しラッキーと思ってしまう。

出国審査を済ませて搭乗待合室に行くと、見た感じ半分以上が日本人である。そのせいか、搭乗開始のアナウンスがなぜか日本語でしか流れなかった。ヨーロッパ人はざわついたが、日本人の様子を見て搭乗開始を悟ったらしく、すぐに大人しくなった。フランスの空港で日本語のアナウンスのみ、というのも妙な話だが、あれはミスだったのだろうか。

ふと見ると、着物を着て長い髪をチョンマゲにした極東アジア系の男性が目に付いた。外人連中に「オー、サムライボーイ!」などと言われて愛想を振りまいており、格好の割には日本人とは思えないコミュニケーション能力である。とはいえ、着物なんて着るのは日本人くらいだろうから日本人なのだろうとは思うが、それにしても日本国内ですら成人の日くらいにしか見かけない中、わざわざシャルルドゴールでキモノを着るというのも何某かの意図を感じざるを得ない。間違いなく、外人に「オー、サムライ!クール!」と言って欲しいだけの構ってちゃんなのだろう。ダッセ。(単にコミュ力の高いこの男性に対するコミュ障のヒガミである。)

 

さて、グヌヌと僻みながら優先搭乗すると、さすがプレエコ、座席がとても広い。座って後から入ってくる人々を眺めていると、何故か日本人女性に「ベレー帽、ボーダーシャツ、フレアスカート、好ましくはバレエシューズ」みたいな格好の方が多いことに気がついた。あれはなんか元ネタあるのだろうか。日本人以外にそういう格好の人は見かけなかったのだが。

さて、搭乗案内中に流れてきた日本語アナウンスによれば、飛行機内には英語、フランス語以外に、ロシア語、スペイン語ポルトガル語を話せる乗務員が乗っているとのこと。要は中国語以外の国連公用語と、日本語、ポルトガル語である。なんだそれ。すげえなエールフランス

離陸前にエレガントだのシックだの、お花畑女子がイメージしそうなフランス的ワーズを連呼するセイフティビデオを見る。ビデオには白人女性4人にアジア系女性1人、アフリカ系女性1人と、それなりに人種のバランスに配慮しているのが印象的であった。

そうして、我らがエールフランス機は遙かな日本に向けて飛び立った。

 

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ウェルカム的なスナック。おいしいプリッツという感じ。


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機内昼飯。エールフランスではエコでもシャンパンを出してくれるのだ!


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機内夜飯(というか日本時間では朝飯)。カトラリーが木というところに、EU的なプラスティック問題への取り組み姿勢が垣間見られる。

 

そうして、12日間の日程を終え、無事日本の地を踏むことが出来た。

到着ロビーで例のサムライボーイを見かけたが、飛行機で着替えたらしく、洋服になっていた。

やっぱり構ってちゃんじゃねえか!

ドイツ編(ベルリン 、ケルン)

ドイツ編の続き。

 

まずはカフェで朝食を

ベルリン2日目の朝は、ホテル近くの「アインシュタインカフェ」にて。Breakfast of Viennaセット(9.5ユーロ)にカフェ・オ・レを追加。

「ウィーンの朝食」セットには、半熟ゆで卵2個、山盛りのパン、ジャム(苺とアプリコット)、バターがついてくる。中でもゆで卵が出色であった。半熟卵2個をグラスに2個重ねて詰め、上から猫草様の謎の植物の小口切りを散らしてある。シンプルに塩胡椒でいただいたのだが、トロトロの黄身とプルプルの白身に謎の植物の青臭さがアクセントとなり、「卵の本気」を見る思いである。パンやバターはヨーロッパなりに旨い。

 

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パンが山盛り。ベルリンでウィーンの朝食とはこれいかに。

 

カフェから出ると、朝から「ビクトリー!」と雄叫びをあげるガチムチの男たちに遭遇した。贔屓のサッカーチームが優勝でもしたのか知らないが、朝から景気の良い輩だ。彼らの影にはきっと朝から負けて悔しがる連中もいるに違いない。

 

フンボルト博物館へ

朝食の後は路面電車フンボルト博物館に向かった。フンボルトペンギンフンボルト海流のフンボルトである。

 

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フンボルト博物館外観。けっこう古い。

 

入るとまず、恐竜の化石が目を引く。恐竜ガチキッズがたくさん群がっていた。

 

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これ以外にもたくさんあった。ものすごい大きい。

 

始祖鳥の化石も有名である。こんなグシャッと潰れて干からびた痕跡がなぜ太古の鳥の化石だとわかったのだろう。もちろん疑っているわけではないのだが、2次元に押し込められた生物の骨は、鳥と言われれば鳥に見えるが、トカゲと言われればトカゲにも見える。まあ、素人には全くわからない奥深い世界があるのだろう(ざっくり)。

 

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始祖鳥。蝶のように舞い、蜂のように刺す。

 

フンボルト博物館で最も感動したのは、剥製の出来の良さである。毛皮は艶やかで、ポージングも生き生きとしており、今にもガラスケースを蹴り破って飛び出してきそうなほどであった。

剥製を作るにおいてもドイッチュマイスターの腕は確かなのである。


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ヒゲペンギン 。まるで空中を泳いでいるかのよう。かわいい!

 

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悲しげな目のコアラ。尻にオジサンを映し出し、哀愁を漂わせている。


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獲物を貪るキツネ。なんで動かないんだっけ?と混乱するほどの高いクオリティ。


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オウムに飛びつくヒョウ。時間をそのまま切り取ってきたかのような躍動感。

 

この素晴らしさは、他の国のネコ科の剥製と比較するのがわかりやすいだろう。

フンボルト博物館のライオンの剥製は、威風堂々としつつダルそうな、まさにテレビの動物番組で見るライオンそのものである。ジャガーもしなやかで迫力がある。


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フンボルト博物館のライオンの剥製

 

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模様的に多分ジャガー。ヒョウとかチーターではなく。

 

アメリカの剥製はディズニー臭いというか、エンタメ寄りの仕上がり。嘘くさい動きで、何やら景気の良いことを話し出しそうである。

 

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ニューヨーク自然史博物館の虎の剥製。

 

一方ロシアは、いつ作られたのかは知らないが、どことなくソ連品質である。なんとなく、虎など見たこともない同志が偉大なる指導者の計画に従い見様見真似で作ったという感じがする。

 

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モスクワ自然史博物館の虎の剥製。


その他、フンボルト博物館ではペンちゃんが無残にぶった斬られていたり、


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なんと酷いことを!!(ペンギンは実は足が長いんです的なアレかな?)

 

人骨模型の手足が日本では見かけないレベルで長かったり、


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スタイル抜群。

 

ホルマリン漬けがドイツ式に埃一つないガラス棚に整然と並んでいたり、


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こんなところでもドイツの5Sは健在。

 

中でも魚のホルマリン漬けが美味しそうだったり、


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出国以来、全然魚食べてなかったんで・・・。

 

コウテイペンギンの赤ちゃんの剥製が可愛すぎたり(でも殺すのは可哀そう)、まあ色々楽しい博物館である。


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かわいそうかわいい!!!

 

そして西側百貨店へ

その後、西側百貨店といういかにもな名を持つKDW(Kaufhaus des Westens)前まで移動。屋台でカリーブルストとビールを摂取した後、KDW最上階にあるカフェテリアで焼いた肉と芋のスープを摂取した。夫はホワイトアスパラを食べたのだが、提供の列に並んでいた際、同じく順番待ちの現地のおじさんに「ウム、貴君も良い選択である!」と褒められたらしい。カフェテリアの一階下が食料品フロアとなっており、売っていた肉が見るからに質が良く、とてもおいしそうだった。

 

その後チェックポイントチャーリーを通りかかり、星条旗を持ったコスプレイヤーを遠巻きに見る。遠巻きに、というのは近づいて写真を撮ったら金せびられそうだから。

 

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星条旗を持っているけど、きっとドイツ人。

 

その足でドイツ歴史博物館へ。

ここではドイツの歴史に沿って様々な展示があったのだが、途中で飽きてしまい、展示をスキップしようと順路を逆行したら係員に注意された。順路といっても壁に控えめに矢印が書いてあるだけの広々とした空間を逆方向に歩いただけである。ドイツ人がルールに厳しいというのはどうも本当らしい。まもなく閉館時間になり、一番興味のあった近現代コーナーは大急ぎで通り過ぎなければならなかった。

 

DDR博物館

ドイツ歴史博物館の閉館後もまだ時間はあったため、DDR博物館に入った。ご存知だろうが、DDRとはドイツ民主共和国(Deutsche Demokratische Republik)の略で、いわゆる旧東ドイツである。

ここでは旧東ドイツの日用品や当時のニュースがキャッチーな感じでまとまっており、当時の一般家庭の部屋の再現や秘密警察の盗聴システムなどが見られる。それほど反共のニオイは強くなく「東ってこんなんだったんだよねアハハハ」的な軽いノリなのが意外であった。中でも「東ドイツあるあるクイズ」らしき展示で年配の方々が異様に盛り上がっていたのだが、何がそんなにおもしろいのかサッパリわからなかった。

売店で絵葉書をゲットしてる外に出た。郵便局にある切手の自販機で切手を貼り、投函。この自販機でなかなか苦労したのだが、どうやって解決したのか覚えていない。何ユーロ札しか使えないとか、そんなようなものだった気がする。


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ソ連の宇宙飛行士(ガガーリンっぽい)を出迎えるベルリンのクマちゃん

 

そこからテレビ塔、世界時計などを見てホテルに戻った。路上では、嬉しそうに缶ビールを飲んでいるオジサンが散見された。ドイツは路上飲酒は違法じゃないらしい。それにしてもドイツのビール好きは本物だ。ビールを飲んでいる人はみんなニコニコしている。飲酒に福祉のニオイがないのは幸せな証拠である。


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テレビ塔。なんとなくUFO呼べそう。


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世界時計。東京よりもソウルよりも平壌が上に書かれているあたりはアレだな。

 

さーて今日の夜ごはんは?

この日の夜は駅前で買ってきたケバブである。中の肉はナニモノかのすり身を固めて焼いてスライスした正真正銘の謎肉だった。ボリュームがあってコレはコレで旨かったが、アレは何肉だったんだろう。鳥と何かを混ぜたような味ではあったが。

 

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謎肉ケバブ。悔しいことに美味い。

 

翌日はケルンに向かいますよ。

翌朝、インターシティエクスプレスでケルンに向かう。駅で朝食のパンを買いたかったのだが、パン屋は長蛇の列であり、かわりに併設のお菓子屋さんでケーキを買った。結果としてケーキを入手してウッキウキである。購入したのはアプフェルクーヒェン、イチゴのタルト、エクレアのようなサクサクのパイの三種類。店員は注文を聞くとそれらをボール紙に手際よく乗せていき、油紙でくるくると包んだ。日本で見られる紙箱より持ちづらいが、ゴミが少なくて良い。

 

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パンがなければお菓子を食べれば良いじゃない!

 

この持ちづらい紙包を捧げ持ち、潰したり落としたりしないよう注意してプラットフォームに上ると、どうも雰囲気がおかしい(お菓子だけに)。

なんと我々が乗るはずだった最新鋭のICEは、故障だかなんだかで超オンボロの機材に変更になっていたのだ。年季の入ったシートはクッションが潰れてベコベコになっており、トイレもちょっとここに書けないくらい汚かった。残念だ。この日こそは食堂車でビールを飲もうと思っていたのに。ションボリしてしまい、あんなにウッキウキしたケーキでもテンションは戻らなかった。ケーキの写真も撮り忘れた。美味しかったのに!

その時、元気に「ハロー!」と熊のような大男が現れた。乗務員がHARIBOをサービスで配っているのだ。「オンボロでごめんね、みんな大好きHARIBOをあげるよ!」と言わんばかりに籠のHARIBOを勧められたが、それまでの自分のテンションとの差について行けずに混乱し、つい断ってしまった。すると「せっかくのHARIBOなのにいらないのかい?」とでも言いたげな悲しそうな表情で熊男は去って行った。

 

気を取り直してケルン観光

不貞寝して起きるとそこはケルンであった。

ケルン大聖堂は駅前にあってお手軽である。入場無料。外壁の一部補修中だったのだが、雰囲気を壊さないように補修中部分には実際のケルン大聖堂外壁を再現した絵のついたネットがかかっていた。今回の旅で何度か見かけたが、これはけっこう良いと思う。せっかく訪れた観光名所が補修中だとガッカリするが、これだと目を細めれば補修中であることも気にならない。

 

これがケルン大聖堂の内部である。天井が非常に高く、それがえもいえぬ神々しい空間を作り出している。

 

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すごい建築技術。

 

そして、ケルンといえばケルシュである。ケルシュとはケルンで作られる軽いビールで、日本のワンコそばのようにおかわりを前提として飲む。おつまみに「メット」という生の豚肉(!)のミンチを乗せたトーストや、再びシュニッツェル等をいただく。


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ケルシュ。苦味が少なくアルコールも薄いので、カパカパ飲めてしまう。


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手で隠しているのは、写真を撮る前に齧り付いてしまったから。

 

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シュニッツェル。ここでもやはり肉と芋。


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ケルン名物、「天と地」という仰々しい名の芋と肉。黒いのは血のソーセージ。

 

すっかり満腹になった我々は、腹ごなしに散歩のつもりが何故かデザートにカフェでケーキを食べ、罪悪感には気づかないフリをしてベルリン名物「ベルリナー」を購入した(ケルンで)。ベルリナーはジャムの入った丸いドーナツに砂糖をビッシリとまぶしたもので、甘いもの耐性の低い方々は一口で気が遠くなるであろう。私は甘党なので美味しくいただいた。


そしてタリスでパリへ。

赤い高速鉄道、タリスで向かうのは、いよいよ最終目的地のパリである。たまたま隣の席には日本人家族が座っていたのだが、DQNというかモンスターというか、ものすごい地雷臭が漂っていたので目を合わせないようにした。詳細は書かないが、「日本人のマナーは素晴らしい」という海外の反応を騙った自己満足をよく聞く一方、「マナーの悪い日本人」というのも本当にたくさんいるのである。

 

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次回、最終回パリ編へと続く!

 

 

おまけ。

それにしてもドイツで思ったのは「浦沢直樹って絵うまいんだな。」ということである。なんのことかわからない方々もいるだろうから説明すると、20年ほど前、浦沢氏による『Monster』という漫画があった。この漫画にはとにかくドイツ人がたくさん出てくるのだが、ドイツの人々は皆この登場人物によく似ていた。人気漫画家に対して失礼だろうが、やっぱすげえ絵うまいんだな。

アムステルダム、ベルリン

ユーロスターのトラブルにより、ロッテルダムインターシティに乗り換え、アムステルダム入りした我々の目的はクロケットの自販機である。説明するまでもないが、クロケットというのはまあ概ねコロッケのようなものと言ってよかろう。アムステルダム中央駅構内には、このクロケットの自販機があるのだ。

クロケットの自販機は、一見下駄箱のようである。お金を入れ、好きな扉を開いて紙に包まれたクロケットを取り出す。この自販機の写真を撮っていないのが悔やまれるが、関東あたりの田舎でよく見かける卵の自販機と同じシステムである。いや関東以外にもあるんだろうけど。

世界中の自販機ファンがこれを目当てにアムステルダムを訪れるという。知らんけど。

 

思った以上にホカホカのクロケットをポケットに入れて乗り換えの電車を待った。

 

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ビーフクロケット。平たく言えばクリームコロッケである。塩気がキツいが旨い。もっと食べたい!!

 

オランダ人には怒られそうだが、今回のアムステルダム観光は以上である。

あとは有料トイレに入ったり、売店でストロープワッフルを買ったり、外でタバコを吸い(夫が)、吸い殻がフルヘッヘンドして薄ら発煙している(マッチ1本火事の元!)ゴミ箱に吸い殻をねじ込んだり、電車の到着が待ちきれずに再び有料トイレで用を足したりしただけである。

アムス駅はトイレが少なく、しかも全て有料だったため、アムスで1番金を落としたのは有料トイレではなかったかと思われる。

そういえば、通行人の身長がやたらと高かった。

 

アムステルダムの次は、再びインターシティでまずはハノーファーまで向かう。

独国境を越えると、「ウェルカム・トゥー・ドイッチュラント!」という英独チャンポンの放送が流れた。ジャーマニーではなくドイッチュラントというあたりに何かのこだわりを感じる。

オランダからドイツ国境を越えた途端、急激に家々の手入れが行き届き出すのが興味深い。街も清潔で、農家の納屋のようなヨレヨレボロボロになりがちな建物すらビシッと角が立っている。

 

ハノーファーでは乗り換えるのみで、今度はインターシティエクスプレス、略してICEに乗り換えた。

ICEには食堂車がついており、そこでビールを飲むのを楽しみにしていたのだが、ドイツ人のオッサンやらオジイサンやらで足の踏み場もないほど混んでいた。皆ニコニコしながらビールを飲みまくっている。いやあ、ドイツ人て本当にビール好きなんだな。

仕方なしに瓶ビールを買い、栓を抜いてもらって席に戻って飲んだ。

ビールを飲むと、疲れて寝てしまった。気づけば外は暗く、まもなくベルリン駅のチリ一つないホームに滑り込んだ。

 

ベルリン駅は、オープンな階層構造の建物で、さりげなくカリーブルストが売られていたりする。日本含め、これまで訪れたどの都市よりも整理整頓清掃清潔躾が行き届いていた。

 

ベルリン駅からブランデンブルク駅までは地下鉄に乗り、そこから宿まで歩いて向かった。

この辺りは東ベルリンであった土地である。ロシア大使館やらアエロフロートやらが並んでおり、分割統治時代の息吹が感じられる。

 

ベルリンの宿はウェスティン・グランド・ベルリン。古いながらも5Sが徹底された安心感と居心地の良さがある。

ロビーは上層階まで吹き抜けになっており、上から下まで眺めているだけで結構時間が潰せる。設計は日本の鹿島建設


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階層構造フェチにはたまらない円形の吹き抜け。音の響き方が独特であった。

 

晩ごはんは近くのビアパブにて、カリーブルストと子牛のシュニッツェル。カリーブルストは、上のカレー粉が上品で、ケチャップが少し辛味がある。大人の味でビールに良く合う。シュニッツェルもう旨いが、まあ牛カツだな。パン粉が細かいので、見た目よりもあっさりしている。

 

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シャツがシワシワなのは乾燥機で乱暴に乾かしたから。

 

前日のステーキフリットに続き「肉と芋」のみの食事である(フランスに着くまでは基本コレが続く)。来る前は芋が主食だと飽きそうだと思っていたのだが、案外飽きない。そして割と何にでも合う。主食として優秀である。

 

次の芋と肉に続く。

ユーロスター(セントパンクラス、アムステルダム )

前回、我々がわざわざヘルシンキからロンドンに渡り、1泊した理由は、ユーロスターに乗るためであった。

言うまでもないことだが、ユーロスターグレート・ブリテン島とヨーロッパ亜大陸にまたがる英仏海峡トンネルを最高時速300キロで駆け抜ける国際列車である。

 

海底トンネルにはロマンがある。水面に浮かんで波に揺られる無力な船に乗ることなく(船酔いするんですよワタクシ)、海峡の底、つまり安定した地面を歩くなり走るなりして向こう岸に渡れるなんて、現代文明万歳。それだけで興奮するものがある。

1980年代に生まれた私は、成長とともに青函トンネル開通、件の英仏海峡トンネル開通、東京湾アクアトンネル開通、ボスポラス海峡トンネル開通のニュースにリアルタイムで接し、そのたびに是非渡りたいと思っていた。いつかユーロスターにも乗ってみたいと思い続けてきたのだ。

 

そんなわけで、ユーロスターである。

セントパンクラス駅のマークス&スペンサーでサンドイッチとミルクセーキ、クッキーを購入し、ユーロスターのセキュリティチェックに並ぶ。かなり混んでいるのだが、出発時間の近い列車に乗る人は入り口により近い場所から列に割り込むことができる合理的システムなので安心だ。

 

セキュリティチェックの後はパスポートコントロールである。

シェンゲン協定外のイギリスから協定内に入るため、EU内の移動であっても出国・入国審査が必要である。入国審査は対岸のフランスの管轄である。電車の絵が描かれた可愛らしいスタンプを適当に開いたページに豪快に押してくれた。

これでイギリスにいながら手続き上は対岸のフランスに入国していることになっている。愉快である。

 

時間までは、ベンチでサンドイッチを食べたりミルクセーキを飲んだり、トイレに行ったりして過ごした。トイレは一般的なJR駅のトイレくらいの清潔さである。潔癖でなければ問題ないのだが、いかんせん薄暗いので謎の場末感が漂う。(眩しいんでしょ、わかってますよ)

 

さて、これがロンドン発アムステルダム行きのユーロスターである。(今回はじっくり写真を撮る暇があった。)


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暇はあったのだが、しかし、何故かこれ1枚しか写真を撮っていなかった。何故なのか。

 

ロンドンを発った我らがユーロスターはジワジワと速度を上げ、イングランドの片田舎を222キロで駆け抜け、英仏海峡トンネルを259キロで疾走した。(速度がモニターに表示されるのだ)
散々萌えると言っておきながら、海底トンネルに入ると外は暗いし、まっすぐ東に向かうだけである。案外無感動。地図で見ていた方が興奮したくらいである。

 

欧州ノ星という相撲取りのような名の列車は、なんの盛り上がりもないまま大陸に乗り上げ、その後驚きの334キロまで加速し、まさに順調そのものである。

我々も、心底油断した。あとはアムスでドイツ国鉄に乗り換えて、ベルリンのホテルで寝るだけだ。

「いやぁー、快適快適、まさに順調そのものですなぁ。」
「インドとロシアを過ぎれば楽勝ですなぁ。」
トラブルがヒタヒタと近づいてくるのにも気づかずに。

最初の兆候は、コンセントだった。充電器を差しているのに、iPhoneに雷マークがつかない。

そして、ブリュッセルを超えたあたりで突然消灯した。

しばらくすると「不具合のため、照明が消えております。現在不具合箇所を点検しております。」とアナウンスが入った。割に聞き取りやすい英語である。

よく知らないが、照明は走行系とは関係ないだろうから、問題ないだろう。そうタカを括っていた。

 

そのうち、見るからに速度が落ちてきた。再びアナウンスが入る。

「電気系統の故障のため、速度を落として運転しております。」

まあ、こんなことは東海道新幹線でだって経験がある。夜の品川〜東京間を高架上の真っ暗な車内から見るのはオツであった。

 

そうしてロッテルダムにつくと、そのまま修理し、修理が完了次第発車するというアナウンスが入った。まあすぐ動くだろう。ここでも我々はまだ特に気にせず待っていた。

 

しかし、待てど暮らせど動かない。

車内放送は「修理中です。あと10分ほどかかります。」と繰り返すだけである。そのうち車内がざわつき出した。席を立ち、辺りを忙しなく動き回る人もいた。

それでも我々は呑気に座っていた。

 

「修理完了にはあと20分ほどかかります。お急ぎの方は13番線のインターシティにお乗り換えください」その放送が入ると、立っていた人々は一斉に列車から降り始めた。

それでも我々は、乗り換える気にはなれなかった。一つには、せっかく憧れのユーロスターに乗っているのだから最後まで乗りたいという気持ちがあった。次の乗り換えにはまだ時間的な予約があったし、20分程度の待ち時間であれば、重い荷物を持って階段を上り下りするのも億劫だった。20分で終わる確証などなかったのに。

今思えばあれが正常性バイアスというものだったのだろう。

 

乗り換える人の波がひと段落する頃、再度アナウンスが入った。

「修理完了の目処が立ちましたので、あと30分で発車します。その後もアムステルダムまでは1時間ほどかかる見込みです。」

ロッテルダムアムステルダム間は60キロである。つまり修理完了しても時速60キロでしか走れない。ロシアの爆走タクシーの半分の速度である。

さすがに馬鹿馬鹿しくなって電車を降り、13番線に向かって走った。火事場の馬鹿力とはああいう状態を指すのだろう、信じられない速度で階段を駆け上り、そして駆け下りた。

そして無事、発車直前のインターシティに滑り込むことができた。


どんなに順調に見えても、油断してはいけない。

そして、少しでも違和感があれば、脱出を検討しなければならない。

固く誓った我々であった。(しかし、すぐにまた油断した。)

 

続く。

 

 

ロンドン(フォートナム&メイソン、ステーキフリット)

前回、ようやくロンドンにたどり着いた。

 

わざわざロンドンくんだりまで飛んだ目的は、ユーロスター乗車であった。ユーロスターの始発駅セントパンクラスに向け、まずは空港からヒースロー・エクスプレスでパディントンに移動、次いパディントンからセントパンクラスまでUberを使用した。

ヒースロー・エクスプレスは正価だとバカ高いのだが、事前購入だと半額くらいで入手できる。車中は薄暗く、どことなく香港のエアポートエクスプレスに似ているように思うが、気のせいかもしれない。

 

さて、パディントンからのUberドライバーは、陽気な雰囲気のオジサンである。陽気なのは良いとして、一般にセンシティブとされる質問を遠慮なくぶっ込んでくるので油断ならない。

「君たちは夫婦なのに、なぜ子どもがいないんだい?」くらいはまあ良いとして「宗教はなんだい?」と聞かれた時にはさすがに面食らった。

西洋社会では宗教を聞くのはタブーだと思っていたのだが、不思議の国の二ポーンへの好奇心が勝ったのだろうか。そもそも、センシティビティ以前に日本の宗教というのは神仏習合だの分離令だの、日本語ですら説明し切らない難問であって、日本をよく知らない相手にそれを理解してもらうのは100%無理である(しかも英語で)。仕方なしに「変に聞こえるかもしれないけど、仏教とシントーっていう宗教の2つだよ」と答えたが、やはり納得できなかったらしく「それは変だね」とだけ答えると静かになった。まあ、悪い人ではないのだろう。

 

そうこうするうちに宿に着いた。セントパンクラス駅徒歩5分のサービスアパートメントである。4階建ての伝統的な石造りのアパートで、エレベーターなど付いていない。

我々の部屋はよりにもよって最上階であった。ヒーヒー言いながら荷物を運び上げると、我々には重大なミッションが待っている。洗濯である。

洗濯室は、これまたよりにもよって地下にある。ゴミ袋に満杯の洗濯物を持って階段を降り、洗剤を忘れてもう一往復したりして、洗濯機をセットするともう部屋に戻るのが億劫になる。

 

そうだ、洗濯が終わるまでビールでも飲みに行こう。

 

ゴミ袋をポケットに詰め、我々は駅前のパブに出かけた。

喉も乾いており、もはやあまり覚えていないが、おいしくグビグビ飲んだ記憶がある。メモを見ると「The Easton flye、ポップヘッド、フラーESB、9.8ポンド」と書いてある。そういうものを飲んだらしい。

店内は混み合って活気があり、トイレも清潔。斜め向かいにオタクとオタサーの姫みたいな日本人カップルがいたのが気になった。

 

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手前のやつがフラーESBでしょうな。

 

ビールを2杯ずつ飲むと、そこそこ良い時間である。アパートに戻り、洗濯物を乾燥機にかけると今度は駅にお茶に出かけた。

お目当てはそう、フォートナム&メイソンのクリームティーである。

 

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セントパンクラス駅。2008年11月13日には下着姿の116人が本駅に集まり、「パンツ姿で公共の場所に集まった人数」のギネス記録を更新した由緒正しい駅である。

 

さすがはフォートナム&メイソン、ショップもイートインも大繁盛である。最初は満席で断られたのだが、よく見るとテラス席が空いており、交渉してみたら案外簡単に座らせてくれた。

お茶を選び、スコーンを2人分注文したはずが、出てきたのはスコーンが2つ乗った皿が一つだけ。バカみたいな話だが、うっかり2 sconesと頼んでしまったらしい。なんだか昭和の海外旅行失敗談のような話である。ウエイトレスに説明すると、申し訳なさそうにもう一皿持ってきてくれた。ええ人や!

言わずもがな、スコーンはサクサクでグルテンが全く出ておらず、大英帝国の底力を感じる美味さであった。女王陛下万歳!


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ス、スコーン、フタツ、クダサイ。

 

ビールも飲んで、オヤツを食べたらあとは晩飯である。アパートに戻って乾燥機から洗濯物を取り込んだらレストランへゴー。

バスで向かおうとするも、バス停が見つけられず(Googleマップはバス停が密集してると本当にわかりづらい)、結局Uberを呼ぶ羽目に。

それでも予約の時間を30分も過ぎてしまったのだが、精一杯悲しそうな顔をして「遅れてごめんなさい!まだ大丈夫ですか?」とウエイトレスのお姉さんに聞くと「いらっしゃい!待ってたわ!」とニッコリ笑い、快く席に案内してくれた。ええ人や!

 

我々が入ったのは、メニューがステーキフリットだけの硬派なパリのレストランのロンドン支店、Le Relais de Venise L'Entrecoteである。

最初にチーズとクルミの乗ったグリーンサラダ、パンが出てくるので、ワインをチビチビやりつつ肉を待つ。(写真なし)

 

ここの特徴はステーキと山盛りのフレンチフライが半分ずつ、2回に分けて出てくることで、1回目を食べている間、残りの半分はロウソクで保温しておいてくれる。そのため、最後までホカホカのまま頂けるのだ。2回目は肉に火が通るので、レアで頼むのがオススメですぞ。

ソースはマスタードに加えてクミンか何かのスパイスが入っていて、たまらなく芋に合う。いや、もちろん肉にも合うのだが。


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少食な日本人女性であれば1回戦で白旗を上げそうな大量の芋と肉。芋は一回あたりマックフライポテトMサイズくらいある。

 

デザートはクレームプリュレ。甘すぎず素朴な味でうまい。


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BBAはついスプーンを掲げて「アメリの好きなこと(古)」をやってしまうのだよ。

 

朝にサンクトペテルブルクを出て、ヘンシンキを経てロンドンへ。

そうして我々の長い一日は更けて行くのであった。

 

続く。

サンクトペテルブルク〜ヘルシンキ〜ロンドン

ロシア編の続き。

GWの旅行記事がまだ終わらないのだが、年末年始も近づいてきたことだし、もう少しスピードアップしよう・・・。

 

 

さて、楽しかったサンクトペテルブルクの日々も終わりを告げ、旅立つときがきた。(滞在たったの三日間だけども。)


次なる目的地はヘルシンキである。しかし、目的地と言いながらもヘルシンキ自体は目的ではない。

目的は、そう、ヘルシンキとロシアを結ぶ高速鉄道アレグロである。

このアレグロ、国境の前後で席に座ったまま入国審査を受けることができる「世界の車窓から」に出てきそうな電車である。島国に生まれ育った我々としては、陸の国境越えには昔から強く憧れていたのだ。

 

出発の朝、ホテルから駅まではGettタクシーを呼んだ。

普段は爆走タクシーの癖に、こういう時に限ってドライバーがやたら安全運転である。歩行者用信号が変わったからって、車道の信号が変わる前から減速するのはいかがなものか。黄色にもなっていないのに!さらに30km程度でチンタラ走る路面清掃車に道を塞がれ時間をロスした上に、右折と左折を間違えやがった!

そうしてやっと駅に着いたのは出発5分前。窓口のオッチャンが爆速でチェックインを済ませてくれた。

キャリーバッグの車輪が浮くほど全力疾走しながら車両に乗り込み、席を見つけると同時に発車した。定刻通り。

本当にギリギリであった。


我々が乗ったのは1等席である。座席は2列1列。同じ車輪には、他に日本人グループが1組いた。やはり海外に出ている日本人が多い。

 

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アレグロ。この写真はヘルシンキ駅だけども。(写真撮る暇なかったからな)


アレグロでは軽食が出る。スモークサーモンとヨーグルト、ライスプディングを小麦粉の生地で包んだ「カレリアンピーラッカ」、そして飲み物である。ちなみにコーヒーは飲み放題。トイレは割と綺麗である。

 

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軽食が北欧的オシャレ。カレリアンピーラッカは、すごい炭水化物の味。


食事をとり、のんびりしているとむっつりした顔の女性がやってきて出国審査が始まった。パスポートを見せると、特にやりとりもなく無感動にスタンプを押して去っていった。

これにより、手続き上はどこの国にもいない状態となった。陸上にいるのに!大陸すげえ。


それからアレグロは白樺の森を超え、北国らしい寒々とした田舎を駆け抜ける。白樺アレルギーなのか、途中から鼻水が止まらない。

たまたま夫が持っていた(グッジョブ)花粉症の薬を飲み、しばらくすると入国審査が始まった。

今度はガチむちの陽気な男性である。しかし、腰に警棒を吊るしており、妙な緊張感があったが、案外あっけなく「順調すぎてつまらないね」などと軽口を叩きながらヘルシンキに着いた。(フラグである)


電車を降り、駅でヘルシンキ空港までの切符を買おうとするも、どこで買えばいいのかわからない。券売機はたくさんあるのだが、ヘルシンキ空港に行く電車のチケットは売っていないらしい。みどりの窓口のような場所に行くと「ここではそのチケットは扱っていません」という。

インフォメーションに行き、やっと「みどりの窓口を出たところにあるキオスクで買えばいい」ということがわかった。

 

しばらく時間があったので、駅を出て辺りを散歩していると、ドナルドダックのような白い帽子をかぶった老若男女を多く見かけた。少し黄ばんでいたり、ぼろぼろだったり、皆年季が入っている。

後で調べたところによると、この帽子は高校卒業の時にもらうもので、毎年5/1「Vappu」という祝日にこの帽子をかぶるんだそうだ。そうして学生気分に戻り、前日の夕方からガンガンに酒を飲む奇習があるらしい。そこらへんにやたらと嘔吐物が撒き散らされているわけだ!!油断すると電柱やフェンスの根本に広がっているのである。帽子をかぶったいい大人がはしゃぎすぎ、電柱に手をついて嘔吐する情景がありありと浮かぶ。反省だけなら猿でもできる(古)


ところで私は海外から絵葉書を出すのが好きである。駅のすぐ隣に郵便局があるので、絵葉書と切手を買いに行った。事前リサーチによると、郵便局のショップでは可愛いムーミンの絵葉書が売っているのだ。

しかし、とても楽しみにしていたのにメーデーだかVappuだかのためショップは閉まっていた。切手の自販機は見つけたのだが、絵葉書がなければどうしようもない。残念だが諦めるしかない。

気晴らしに、素敵オヤツでも入手しようと、駅近くのコンビニ「R kioski」に入ったときである。

ムーミンの絵葉書が売っていたのである!レジの北欧人っぽい長身のお姉さんに聞いてみると、切手?オフコース売っているわ、という。

イソイソと絵葉書と切手を買い、イートインコーナーでコリコリと書きつけ、先ほどの郵便局前のポストに投函した。切手もムーミンで可愛い。

ミッション完了!満足である。

 

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ムーミンの絵葉書。いろんなキャラクターが描いてあってお得感がある。


駅構内の売店でカフェラテとシナモンロールを購入し、エアポートエクスプレスに乗り込んだ。トイレはゲロもなく綺麗。シナモンロールはまあ普通に美味しい。日本にあるものと違って、それほど甘ったるくなく、ロールパンっぽい感じ。コーヒーによく合う。

 

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シナモンロール!上にアイシングがかかっていないのがポイント。


北欧デザインのヘルシンキ空港に着き、ブリティッシュエアウェイズのカウンターに並んだ。余裕を持って2時間半前に並んだのだが、カウンター前には長蛇の列ができており、しかも全然動かない。見ると、エコノミー用のカウンターではヨーロッパ人の太ったお姉ちゃんたちがチンタラ仕事していた。預入のスーツケースに、あの細長いシールみたいなやつ(名前を知らない)をつけるのに酷く難儀している。不器用なのだろう。

ふと横を見ればプライオリティレーンでアジア系のお姉さんがテキパキと働いている。人種によって能力を決めつけるつもりは毛頭ないが、それでも海外旅行でアジア人の几帳面さ、勤勉さを感じるシーンは多い。


制限区域内にも色々とショップがあり、本当は早めにチェックインして空港内を見て回りたかったのだが、搭乗開始まで1時間を切っていたため断念した。

とはいえ、せっかくのヘルシンキなのでイッタラで使いやすそうな皿を2枚購入。ほら、日本で買うと高いからぁー(マウンティング)。実際15ユーロくらい。安い。日本で買うと3,000円くらいする代物である。

 

出国審査官はガイルをツルっとさせたような陽気な若者である。パスポートを見ながら「Where are you from?」と聞かれだが、瞬時に質問の意味がわからなかった。ジャパン出身だけど、パスポートを見ればわかるだろう。旅程を聞いてるのか?と思い「ロシア・・・」と答えるも、Rの発音が悪すぎて伝わらない。なんとか理解してもらったが、今考えればセントピーターズバーグって答えればよかったなアレ。


そうして乗り込んだブリテッシュエアウェイズ。

隣の席は色々盗み見るにロシア人である。過ぎ去ったロシアが再びすぐそこに。離陸と同時に靴を脱ぎ出したが、申し訳ないが足が臭い。

臭いに耐えて3時間ほど、ロンドン・ヒースロー空港に到着した。

乗客は、サインが消えるまでシートベルトを締めたまま大人しく座っており(他の国だと着陸と同時にシートベルトを外す音が聞こえる)、降りる時も前の席の乗客が全て通路に出るまで止まって待っている。通路でも押し合わずに譲り合う。

さすがは紳士の国の飛行機である。シートベルトサインが消えると同時に通路に出て駆け下りようとしていた自分を少し恥じた。

 

続く。