ロンドン(フォートナム&メイソン、ステーキフリット)
前回、ようやくロンドンにたどり着いた。
わざわざロンドンくんだりまで飛んだ目的は、ユーロスター乗車であった。ユーロスターの始発駅セントパンクラスに向け、まずは空港からヒースロー・エクスプレスでパディントンに移動、次いパディントンからセントパンクラスまでUberを使用した。
ヒースロー・エクスプレスは正価だとバカ高いのだが、事前購入だと半額くらいで入手できる。車中は薄暗く、どことなく香港のエアポートエクスプレスに似ているように思うが、気のせいかもしれない。
さて、パディントンからのUberドライバーは、陽気な雰囲気のオジサンである。陽気なのは良いとして、一般にセンシティブとされる質問を遠慮なくぶっ込んでくるので油断ならない。
「君たちは夫婦なのに、なぜ子どもがいないんだい?」くらいはまあ良いとして「宗教はなんだい?」と聞かれた時にはさすがに面食らった。
西洋社会では宗教を聞くのはタブーだと思っていたのだが、不思議の国の二ポーンへの好奇心が勝ったのだろうか。そもそも、センシティビティ以前に日本の宗教というのは神仏習合だの分離令だの、日本語ですら説明し切らない難問であって、日本をよく知らない相手にそれを理解してもらうのは100%無理である(しかも英語で)。仕方なしに「変に聞こえるかもしれないけど、仏教とシントーっていう宗教の2つだよ」と答えたが、やはり納得できなかったらしく「それは変だね」とだけ答えると静かになった。まあ、悪い人ではないのだろう。
そうこうするうちに宿に着いた。セントパンクラス駅徒歩5分のサービスアパートメントである。4階建ての伝統的な石造りのアパートで、エレベーターなど付いていない。
我々の部屋はよりにもよって最上階であった。ヒーヒー言いながら荷物を運び上げると、我々には重大なミッションが待っている。洗濯である。
洗濯室は、これまたよりにもよって地下にある。ゴミ袋に満杯の洗濯物を持って階段を降り、洗剤を忘れてもう一往復したりして、洗濯機をセットするともう部屋に戻るのが億劫になる。
そうだ、洗濯が終わるまでビールでも飲みに行こう。
ゴミ袋をポケットに詰め、我々は駅前のパブに出かけた。
喉も乾いており、もはやあまり覚えていないが、おいしくグビグビ飲んだ記憶がある。メモを見ると「The Easton flye、ポップヘッド、フラーESB、9.8ポンド」と書いてある。そういうものを飲んだらしい。
店内は混み合って活気があり、トイレも清潔。斜め向かいにオタクとオタサーの姫みたいな日本人カップルがいたのが気になった。
手前のやつがフラーESBでしょうな。
ビールを2杯ずつ飲むと、そこそこ良い時間である。アパートに戻り、洗濯物を乾燥機にかけると今度は駅にお茶に出かけた。
お目当てはそう、フォートナム&メイソンのクリームティーである。
セントパンクラス駅。2008年11月13日には下着姿の116人が本駅に集まり、「パンツ姿で公共の場所に集まった人数」のギネス記録を更新した由緒正しい駅である。
さすがはフォートナム&メイソン、ショップもイートインも大繁盛である。最初は満席で断られたのだが、よく見るとテラス席が空いており、交渉してみたら案外簡単に座らせてくれた。
お茶を選び、スコーンを2人分注文したはずが、出てきたのはスコーンが2つ乗った皿が一つだけ。バカみたいな話だが、うっかり2 sconesと頼んでしまったらしい。なんだか昭和の海外旅行失敗談のような話である。ウエイトレスに説明すると、申し訳なさそうにもう一皿持ってきてくれた。ええ人や!
言わずもがな、スコーンはサクサクでグルテンが全く出ておらず、大英帝国の底力を感じる美味さであった。女王陛下万歳!
ス、スコーン、フタツ、クダサイ。
ビールも飲んで、オヤツを食べたらあとは晩飯である。アパートに戻って乾燥機から洗濯物を取り込んだらレストランへゴー。
バスで向かおうとするも、バス停が見つけられず(Googleマップはバス停が密集してると本当にわかりづらい)、結局Uberを呼ぶ羽目に。
それでも予約の時間を30分も過ぎてしまったのだが、精一杯悲しそうな顔をして「遅れてごめんなさい!まだ大丈夫ですか?」とウエイトレスのお姉さんに聞くと「いらっしゃい!待ってたわ!」とニッコリ笑い、快く席に案内してくれた。ええ人や!
我々が入ったのは、メニューがステーキフリットだけの硬派なパリのレストランのロンドン支店、Le Relais de Venise L'Entrecoteである。
最初にチーズとクルミの乗ったグリーンサラダ、パンが出てくるので、ワインをチビチビやりつつ肉を待つ。(写真なし)
ここの特徴はステーキと山盛りのフレンチフライが半分ずつ、2回に分けて出てくることで、1回目を食べている間、残りの半分はロウソクで保温しておいてくれる。そのため、最後までホカホカのまま頂けるのだ。2回目は肉に火が通るので、レアで頼むのがオススメですぞ。
ソースはマスタードに加えてクミンか何かのスパイスが入っていて、たまらなく芋に合う。いや、もちろん肉にも合うのだが。
少食な日本人女性であれば1回戦で白旗を上げそうな大量の芋と肉。芋は一回あたりマックフライポテトMサイズくらいある。
デザートはクレームプリュレ。甘すぎず素朴な味でうまい。
BBAはついスプーンを掲げて「アメリの好きなこと(古)」をやってしまうのだよ。
朝にサンクトペテルブルクを出て、ヘンシンキを経てロンドンへ。
そうして我々の長い一日は更けて行くのであった。
続く。