日日是女子日

細かすぎて役に立たない旅行ガイド

サンクトペテルブルク(エルミタージュ美術館、クンストカメラ)

ロシア編の続き。

 

2019年4月30日。この日は朝からエルミタージュ美術館である。

エルミタージュ美術館は、かつてロマノフ王朝の冬宮殿であった絢爛たる建物である。そら豆色の外壁がかわいい。

先の大戦時、この建物も灰色に塗られたのだが、終戦後、戦争からの開放感を象徴する明るいグリーンに塗り替えられたらしい。赤じゃなくてよかったな。

 

エルミタージュの正面にある宮殿広場では、対独戦勝記念日を5月8日に控え「勝利の日」の真っ赤な横断幕が誇らしげに掲げられていた。共産主義ドヤ!である。

 

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«С днём победы!» 勝利の日おめでとう!と書かれた赤い布。お約束の星印とともに。

 

エルミタージュは、真っ正直に入場しようとすると、チケット売り場に並ぶだけで1時間は軽く過ぎるといふ。

それを恐れた我々はあらかじめネットでeチケットを購入していた。これでスイスイ入場できるはずである。ホテルから10分ちょっと歩き、開館時間20分前に到着した。

 

正面入口を横に外れ、美術館向かって右の専用レーンに着くと、開館前だというのに既に100人ほど並んでいた。それだけでもエルミタージュ恐るべしなのだが、さらに驚くべきことに、ざっくり見積もってその約半分が日本人であった。2列で並ぶ行列で、おおよそ1組おきに日本人と思しき、大人しい清潔なアジア人がいるのである。

海外でこんなに多くの同胞を見たのは始めてだ。さすがに公式10連休は伊達じゃない。新天皇陛下万歳!と、対独戦勝記念日直前のロシアで思う。敬意を評して日の丸を振りたいところだ。旗を持ち合わせてなくても、白いメモ紙と赤ペンさえあれば国旗一丁上がりなのが日の丸の良いところである。(振らなかったよ。もちろん)

 

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そら豆色のエルミタージュ。eチケット専用レーンは写真右奥。

 

肌寒い中待ち、開館時間を過ぎる頃にはじわじわと列が進み始めたものの、結局中に入るまでに全部で40、50分はかかっただろうか。

ロシアお馴染みの二重扉をくぐり空港にあるような立派な金属探知機を抜けると、そこはクローク。コート掛けのフックがズラリと並ぶ。

クロークの老人にスプリングコートを預けるが、コートの襟口に掛けるためのフープがなかったために、クロークの老人に困惑した顔をされた。老人は矯めつ眇めつコートを眺め、なんとか工夫してフックに掛けることに成功した。(まあフードをフックに引っ掛けただけなのだが。)

 

 

さあ。

コートを預けたら、めくるめく美術鑑賞のはじまりはじまり。

 

 

と、展示品について大いに語りたいところだが、ワタクシもともと美術リテラシーが低い上に、宗教画宗教画に宗教画、時々肖像画みたいな試される美術館感がすごいので、ロマノフ家には申し訳ないがすぐに飽きてしまった。基本的に「ロシア帝国金持ってんな」的な下世話な好奇心だけで乗り切ったようなものである。

火の車の財政の中、民の苦しい生活を顧みず、豪奢な生活を続けていた的な何かをビンビン感じたかも!(ふわっ)そりゃ革命起きるかも!(ふわふわっ)

 

・・・あんまり語ると教養がないのがバレるのでこの辺にしておく。

 

下に写真を貼っておく。もっと豪華な部屋や有名な絵画もあった気がするのだが、なぜかこれしかiPhoneに収めていなかった。

 

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素敵書庫。吹き抜けバルコニーの2階部分も書庫。本好き垂涎の萌え空間。


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ラピュタにあれば、制服さんたちが無理やり剥がしそうな金ピカ具合。そりゃ革命起きるわ。


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高校の美術倉庫を立派にしたような。美大受験経験者は懐かしいんじゃないかな?(適当)


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リアルな少年と、なんとも言えない顔のイルカ?のギャップを楽しむ石像。

 

日本人の感覚でいうと、トイレが思ったよりも混んでないのが欧米だな。アジア人は膀胱が小さいので、例えば日本の博物館に同じだけ人がいたら、きっと絶望的な行列ができただろう。

 

他に一つだけ気になったのが、美術館の割に窓から燦々と直射日光が当たっていることである。色褪せが本気で心配になるレベルだが、不思議と展示品の色は鮮やかなままである。まさかUVカットガラス・・・。否、単に緯度が高いために問題にならないだけだろう。

 

んもう、好きな人は丸一日いられるボリュームの美術館だが、午前中だけで胸焼けしたので出ることにした。

 

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ミュージアムショップでかわいい絵葉書を購入。猫軍人。

 

帰りのクロークでは、老人になぜか私とは違うコートを渡されたので「エータニマイェー(これは私のものではありません)」と適当に言ったら通じた。だったこれだけだが、正直ちょっと嬉しかった。

 

 

無事コートを取り戻して外に出ると、立派な戦車が鎮座していた。戦勝記念日のイベントだろうか。

iPhone没収されるかな、とドキドキしながら写真を撮ったが、目が合っても軍人さんはスルー。シメシメと遠慮なく撮りまくった。

 

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これはソ連軍の戦車か?


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戦車などがズラーリ。レッドベレーは特殊部隊である。

 

 

さて、いいもん見せてもらったところで、ちょいと腹もペコちゃんだし、道端のスタローヴァヤでお昼にした。例によって写真はない。ビールと間違えてノンアルコールビールを買ってしまい、チッと舌打ち。なんか安いと思ったんだよな。

ノンアルコールビールを飲みながら絵葉書を書き、郵便局に向かったのだが、これは話が長くなるので別記事にする。

 

その後、青銅の騎士像を見に行くと、どこかから微かに太鼓の音が聞こえてきた。宮殿広場にあった戦車は関係あるのだろうか。

 

さらに歩き、ロストラリナヤ・コロンナを右手に見ながらドヴォルツォヴィ・モストを渡り、クンストカメラに向かった(もう何がなんだか)。本当はペトロパブロフスク要塞に行きたかったのだが、時間がないので諦めた。

ちなみに、ロストラリナヤ・コロンナは気の多い太陽の塔のような塔である。写真を撮り忘れたので、気になる方はググってくださいますよう。

 

クンストカメラは、「希少なものの陳列所」という意味の博物館で、胎児のホルマリン漬けがズラリと並んでいたり、様々な民族(主に有色人種)の蝋人形が展示してあったりする。日本(っていうか江戸)の蝋人形は、ハレとケをごちゃ混ぜにして無理やり臨場感を持たせたようなもので、何やら眉間のあたりがモヤモヤしたが、興味深いといえば興味深い。

悪意のある言い方をするが、白色人種の皆様で大盛況であった。

 

楽しいぞロシア!!

 

続く。

京都(本家田毎、京夕け善哉、天龍寺の精進料理、他)

私の中で今幕末がアツい。

 

もともと日露戦争が激アツだったのだが、この最後の貴族戦でも幕末を生き残った人が活躍していたりして、今さら遡って幕末がアツいんである。(ちなみに、高校時代は地理選択だったので、知識はほぼゼロである。)

 

さて、幕末といえば京都である。ほら天誅とか池田屋とか京都御所とかそんな感じだよ!(浅い知識)

それで京都がワタクシ的にホットなわけで、7月頭(もうふた月も経つやんけ)にホットな京都に一泊で行ってきたのだが、もうアツいのなんのって蒸し暑すぎた。盆地の気候に心折れ、史跡なんて全然辿らなかった。

ただ食って飲んでただけである。

 

そんなわけで、150年前、京の都に露と消えにし維新の志士たちに(申し訳程度に)思いを馳せつつ、京都でおいしく食べたものを自慢しようと思う。(もう2ヶ月前だけどな)

 

 

本家田毎

 

京都に来たら、まずはオヤツに食べたいたぬきうどん。というか、昼飯時に行くと並んでいたりするので、オヤツくらいがちょうどいい。

ゆるくトロミをつけたおツユと、全くコシのないフニャフニャのうどんが癖になる。おあげも甘くてジューシー。

生ビールはヱビス。サーバーがちゃんとメンテされている安心感。美味しいビールで喉を潤す。

 

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たぬきうどん。似たような名前のお店がちょいちょいあるので、ご注意を。

 

 

 

京夕け 善哉

 

オヤツのうどんが消化しきる頃、以前も伺った「京夕け 善哉」へ。

このお店は閑静な住宅街にあるのだが、向かう途中ピアノの音が聞こえてきた。バイエルだかブルグミュラーだか、元気な音である。近所のイケズなおばちゃんに「お姉ちゃんピアノ上手にならはりましたなぁ。」などとチクリと言われるないんだろうか。うちハラハラしましたえ。

 

さて、先にも書いた通り、このお店は前にもお邪魔している。

京美人のサバサバしたおかみさんに「数ある和食屋の中で2回も来てくらはって」と深々と頭を下げられたのだが、何しろ部屋も新しく清潔で、居心地がいいのだ。もちろん料理も美味しい。個人的にはまたリピートしたいナンバーワンである。

 

とりあえず日本酒で乾杯。

京都、佐々木酒造の聚楽第(俳優の佐々木蔵之介さんのご実家らしい)。すっきりと軽く、すいすい、ぐびぐび飲める。後味に少し苺っぽいようなクセがあり、ただの水のような酒に終始しないのがいい感じ。好きどすえ。


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昨今の日本酒離れを受け、京都では「日本酒で乾杯運動」が行われているらしい。

 

最初はたまご豆腐、じゅんさいと車エビ、上に青柚子。

たまご豆腐の食感がしっかりしており、もっちりしている。エビがぷりぷり、じゅんさいがチュルチュル。ドンブリいっぱい食べたい(下品)。


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お次は八寸。

上から時計回りに白ずいき、胡瓜の雷干し、ウズラの卵の黄身の味噌和え、カタツムリを象った煮アナゴ(横から見ないとわかりづらい)、ヤマモモ、タコの柔らか煮。

どれも上品な味付けながら、酒が進む。白ずいきは夏の京野菜らしい。胡瓜は滋味豊かな良いツマミ。ウズラの卵黄も、口の中でねっとりと、酒と祝言を挙げてるぜ(マリアージュな)。

 

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次はあゆの椀もの。

あゆを一夜干ししたもので、燻してあるのかスモーキーな香りがする。上にあるのは骨せんべい。ゴボウの中心がくり抜いてあるため、土臭さが緩和され洗練されたお味。ダシはマグロぶし?ややストイックな味である。


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ここで日本酒をもう1本。越乃景虎

 

ここで、お造り。

ケンサキイカの上にある黒いものは水前寺海苔で、川藻を集めて固めたものらしいが、予想に反して食感はシャキシャキ。ほか、明石のタイがムチムチでうまい。意識高く塩でいただく。マグロはまあお約束なので普通にうまい。


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そして出された、京都らしい一品、賀茂茄子とニシン。

賀茂茄子は素揚げしてあり、ひんやりシャキシャキ、油が浸み出してダシがこっくりしている。ニシンは噛むほどに旨味がコンニチワしてきて反則レベルにうまい。もともと身欠きニシンが大好物なので、これはおかわりしたいほど好き。


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スズキの若狭焼き。

醤油味がギューっとしみていながら、辛くないのはさすがは京都。添え物のサツマイモが美味どした。


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ここでおビール、熟撰生樽。

 

アワビの酒蒸し、コーンと満願寺とうがらし。

 

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私は貝類がダメだと予約時に伝えておいたところ、アワビの代わりにスズキのカマを寄せて酒蒸しにしたものが出た。酢の利かせ方が上品。合わせてある紅もずくが太くて食いでがある。

 

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お次はハモ鍋。

以前来た時も出されたが、山椒が前より弱く、ゴボウが強く効いている気がする。前より野生的な感じがした。季節によって人間の味覚も変わるので、それに合わせて微調整しているに違いない。優しい、ホッとする味。


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〆は明石の鯛めし、味噌汁(生麩)。

大きなお頭入りの鯛めしはいいダシが出てる。おかみさんが食べやすく身をほぐして盛ってくれる。前回はたまたまタコめしだったが、通常は鯛めしが定番とのこと。タコめしよりも断然うまい。次行く時は鯛めしを指定したいところ。

そして相変わらず漬物がうまい。漬物の強すぎるアミノ酸味が苦手なのだが、ここのはとてもアッサリしていて野菜の味が生きている。


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最後はデザート、かき氷。

好きなトッピングを選べるとのことだったので、欲張って小豆、練乳、抹茶の3つを選ぶ。鉄板の美味さ。

かき氷以外の季節に来てみたい。


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天龍寺、精進料理

 

翌日の昼は天龍寺に行き、精進料理をいただいた。有名な映えスポット、竹林が近いので、外国人観光客が目立つ。

先に結論を書いてしまうと、悪くはないが特別良くもない。3000円のコースにしたが、庭園の入園料500円が追加でかかる。

 

そんなわけで、軽ーくしか書かない。あんまり覚えてないし。

右上から時計回りに、色々盛合せ(もずく・笹餅・サツマイモ・青梅・冬瓜)、胡瓜の胡麻和え(だったかな?)、胡麻豆腐(醤油いらない)、大豆をすったもの、ごはん、中央か麩の煮物。

胡瓜はボヤッとした味で、大量にボールに作っておいたものを小分けにして出している感じ。別に不味くはないが、角がヘナっとしてる。


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別皿で茄子の田楽、デザートはメロン。


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繰り返すが、別に悪くない。悪くはないが、他にも精進料理の店は色々ある中でわざわざまた行くかと言うと、もういいです、という感じ。

 

 

 

そんなわけで帰るぞ

帰りはぷらっとこだま、奮発してグリーンである。

京都伊勢丹で駅弁と「出町ふたばの豆餅」を入手。道中のお供にプレモルと四合瓶を買い、レジでプラコップを2つもらった。ちなみに、プレモルぷらっとこだまにオマケで付いてくる飲み物券を使ったのでダーターである。ワンダホー!!

 

お弁当は和久傳の鯛ちらし。見た目よりも鯛が厚くて食べ応えがある。これを日本酒をチビチビやりながら食べるのがたまらなく幸せなのだ。なんで新幹線で飲む酒はあんなにうまいのか。

 

ちなみに日本酒は、京都の城陽酒造の純米吟醸55。吟醸香があり、華やかで軽い女子供が好きなタイプである。(もちろん私は大好きだ!)


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高級感のある外観。右は日本酒のプラカップ


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オープンザ弁当。上にある季節のオカズをツマミに酒を飲み、下の鯛チラシで〆るのだ。


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グイグイ飲み、名古屋に入る頃には一瓶空いてしまった。

 

そしてデザートに出町ふたばの豆餅。

某樋口師匠が理不尽に欲しがるものの中では比較的なんとかなる方だが、本店では朝から長蛇の列に並んだ末にやっと手に入るレアアイテムである。

が、私はあらかじめ2週間前に京都伊勢丹のホームページで予約しておいたので、30秒で手にすることができた。


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餅がトロトロ、程よい塩気の豆がうまい。

 

五臓六腑に幸せをしみこませながら、我々の旅は終わるのであった。

 

 

おまけ。

京都市内をバスで移動している時、駐車場で流しそうめんイベントを開催しているレストランを見かけた。

真夏の強い日差しを遮るものは何もなく、当然のごとく全く賑わっていない。

客と見られる中年男性一人に対し、スタッフは若い男性一人。何しろ一人で食べられる量など知れているので、ごくたまにしか流されないそうめん。ほとんどの時間は客のスタンバイ待ち。

ダルそうな客と、これまたダルそうなスタッフが、炎天下の中タイマンで流しそうめんを強行する姿は、なかなかシュールであった。

なぜそこまでして流したいのか。

サンクトペテルブルク(聖イサアク大聖堂、血の上の救世主教会、ロシア美術館)

ロシア編の続き。

サンクトペテルブルク観光その1をお届けする。

 

まずは、聖イサアク大聖堂へ。

ホテルに荷物を置き、服をあるだけ着込んで外に出た。寒いのだ。

そしてホテル、ペトロ・パラスから5分ほど歩き、聖イサアク大聖堂に到着した。

 

聖イサアク大聖堂は、ロシア正教の大聖堂であり、「サンクトペテルブルクの歴史地区と関連建造物群」の一部として世界遺産に指定されている。

その姿は、ズッシリとした石造りの構造を巨大な石柱が支え、先頭中央にたまねぎ型のドームを頂く。この金色の美しいドームは、レニングラード包囲戦の時、ドイツ軍の標的になりうるとして灰色に塗り直されたらしい。今となっては、この美しい建物を爆撃するなど到底信じられないが、当時の人々は飢えと寒さの中で、どのような気持ちで灰色のドームを見上げたのか(大風呂敷)

 

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散々語っておいて、肝心のドーム部分が見えづらい写真しかない。なぜちゃんと正面から撮らなかった私よ。

 

チケットを買うために、有人窓口の長蛇の列に並びかけて、自動券売機に誰も並んでいないことに気づいた。なぜ皆自動券売機を使わないのだろう、故障中だろうか。

壊れていても驚かないが、ダメ元で操作してみたら普通に買えた。展望台と聖堂内の入場券のセット、400ルーブル。タッチパネル式で、その上英語にも対応しており、操作は簡単。猿でも買えるとまでは言わないが、読み書きができれば誰でも操作できるに違いない。まあ、支払いはクレジットカードのみなので、少なくともカードのない人は使えない。

 

さて、チケットを買ったらまず展望台に登る。200段ちょっとの螺旋階段を上り切ると、ドーム直下をグルリと囲むバルコニーに出る。

外は風が強く、高度感もある。一応手すりはあるが、バルコニーの幅は狭く、すれ違うのが怖い。手すりをギューギューに掴んで一周したが、この手すりがまたキンキンに冷えている。冬に素手で掴んだら凍傷になるのではないか。

 

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怖いので、迫力ある写真は撮れず。中央奥に小さく至聖三者大聖堂の青いドームが見える。

 

怖いし寒いしで、そそくさと下に降り、暖を求めて大聖堂の中に入った。

中に入ると、壁一面に描かれたキリストの生涯と聖人たち。このテのものにしては意外に写実的である。

 

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豪華な装飾。

 

しかし残念ながら、ありがたい聖人がたくさん描かれていても、正直イエス・キリストしかわからない。わからないので「フーン」としか思えないのである。

もし、ここで推し聖人でもいれば「ここの大聖堂はペテロ様がイケメン!」「パウロ様との距離が近い!」など、色々楽しめるのではないか・・・!みんなで作ろう推し聖人。(仏像萌えとかあるし)

聖人たちに見下ろされながら、若干不純な決意を固めて外に出た。

 


次は血の上の救世主教会へ。

聖イサアク大聖堂を出て、重厚な街並みを25分ほど歩き、血の上の救世主教会に着いた。この教会は、モスクワの聖ワシリイ大聖堂(パルナスのCMのアレ)と同じく、ポップ&キュートなたまねぎ系大聖堂である。

 

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なぜこの可愛い玉ねぎ屋根の写真をもっと撮らなかった私よ!なぜ!!(てっぺん奥の玉ねぎは工事中)

 

ここでも混雑した有人窓口を避けてガラガラの自動券売機でチケットを買う。

購入したチケットを自動改札機にかざして入ろうとするも、タイミングを間違えて通る前にバーが閉まってしまう。そしてバーに激突。太腿を強か打ち「ンハァ〜」みたいなマヌケな声が出た。

痛さでプルプルしながらバーを押してみても、既にビクともしない。再びバーコードをかざしてみても開かない。ワーワー騒いでいたら、怖い顔の門番がやってきて、呆れた顔で通してくれた。日本の恥である。

(ちなみに、この時できた青痣は、時間とともに赤くなり、そして黒くなったが、結局帰国するまで消えなかった。)

 

中に入ると、ここにもイエス・キリストと聖なる仲間たちがビッシリと描かれている。

よく見ると、油絵ではなく精密なモザイク画である。なんと手が込んでいるのか!

とはいえ、やはりここでも「フーン」程度で、ここで推し聖人がいれば、きっともっと(以下略)

 

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天井からイエス・キリストがコンニチワ。


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宇宙の果てからやってきた高度な文明を持つ知的生命体が、一人のユダヤ人男性に知恵を授けた。後のキリストである(適当)。ていうかコレ女性か?


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元気な男の子ですよ、の図。

 


この日最後はロシア美術館

大聖堂2つを流し見ても、まだ日没には時間がある。

血の上の救世主教会の近くのロシア美術館に寄ることにした。

 

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たまご色の外壁がかわいい。

 

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スズメのムクムク感がかわいい。(右の丸の上)

 

入口は建物の右端にひっそりとあり、何か入ってはいけないところに忍び込むような、疚しい気持ちになる。

中は宗教画、宗教画そして宗教画、たまに風景画があって再び宗教画。素晴らしいのはわかるのだが、いかんせんジャンルが偏っているので、正直お腹いっぱいになる。ここも推し聖人がいれば(以下略)

 

ぐったりして外に出ると、先の方に片手を伸ばした銅像が見えた。すわレーニン像か!と近づいてみると、惜しいことにプーシキン像であった。

 

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ポーズが似ている。

 

ここからホテルに帰る途中でスーパーマーケットに寄り、ビールやシャンパンスコエ、牛乳、カニカマなどを買う。シャンパンスコエは、シャンパーニュ地方とは何の関係もないロシアのスパークリングワインである。コスパ最強。なお、牛乳は獣臭く、カニカマは日本とそう変わらなかった。

 

 

 

さぁて、ごはんを食べますよ。

そろそろ日も暮れるので、1日目の観光はここまでにして、晩ごはんにしよう。

ホテルの斜向かい、ジョージア&ウズベキスタン料理Kazan Mangolである。

 

席に着き、とりあえずビールを頼む。

食べ物を注文し、ビールをチビチビやりながら料理を待つ。この店は余裕で英語が通じる。

 

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ビール。泡などという洒落臭えものは存在しない。硬派。

 

料理は全て優しい味付けで、少しエスニックな感じがあって美味。ロシアにおけるジョージアの料理は、日本でいう中華料理のようなものなのかな、と少し思った。

 

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ナスでナッツのペーストを巻いたもの。トッピングのザクロが良い仕事をしている。(既に半分食べてある)


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串焼きハチャプリ。ちぎりパンみたいな中にとろーりチーズ。子どもたちの好きな味。


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ビーフ&ポークとラムのヒンカリをふたつずつ(2個は写真撮る前に食べてしまった)。ラムがハーブ味で好み。


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やはりロシアに来たからにはボルシチを食べなければ。安定の旨さ。


そうしてお腹も心も満足し、サンクトペテルブルクの夜は更けていく。

 

続く。

 

 

おまけ。

ちなみにパルナスこれな。

サンクトペテルブルク(プルコヴォ空港、爆走タクシーGett再び)

ロシア編の続き。

 

サンクトペテルブルク、プルコヴォ空港に着いた我々は、とにかく喉が渇いて仕方がない。前回残しておいたロシアルーブルを使い、自動販売機でレモン風味の炭酸水を買って飲む。120ルーブル、日本円にして200円くらい。微妙にボッタクリである。

バゲッジクレームで荷物を回収し、上着を着込む。思った以上に寒い。

 

空港のATMで現金を下ろし、Gettアプリでタクシーを呼ぶ。

Gettとは、ヨーロッパ、ロシアで普及しているUberのようなタクシーアプリである。使い方もUberと同じで地図で行先を選ぶだけ。とっても簡単。猿でも使えるとまでは言わないが、類人猿くらいなら訓練すれば使いこなせそうだ。

海外でもボッタクリを気にせず、簡単にタクシーが使える。本当に良い時代だ。ボッタくるのは空港の自販機くらいである。

 

さて、Gettを待ちながら辺りを見渡すと、なんだがガランとしている。人が全然いない。

人口の多いニューデリーから来たので、余計に人が少なく感じるのだ。ニューデリーで、インド人が50人いるスペースに、ロシア人が1人くらいの感覚だ。

ウィキペディアによると、ニューデリーの人口密度が5,855人/km2、サンクトペテルブルクは3,743人/km2と1.5倍の差に過ぎない。ここから言えば、インド人が50人いるスペースに33人ほどのロシア人がいるはずだ。

にも関わらず、インド人50人に対してロシア人1人ということは、30人ちょっとのロシア人がどこかに隠れていることになる。ラーゲリに収容されているのかな?

局所的な人口密度を市域全体の人口密度で議論しているのがおかしいのであって(そもそも目測だし)、グラスノチすればラーゲリって言ってみたかっただけだ!

 

閑話休題

 

空港に入ってきたドライバーは、一度、我々に気づかず、目の前を通り過ぎてしまった。

再びUターンして戻ってきたので、猛ダッシュで追いつき、車に追いついて合図すると、やっと気づいたらしく、キィっと停車した。

ヒュンダイの白いセダンから出てきたドライバー(仮にセルゲイ氏とする)は、ノシノシと近づくと、アッチの方を指差し、英語混じりのロシア語で何やら話しかけてくる。

おそらく「ここじゃなくて、あそこで待ってなくちゃダメだよ。」ということらしい。それは申し訳ない。「イズヴィニーチェ(ごめんなさい)」と答えて車に乗り込んだ(特に責任が伴わない限りは素直に謝るべきだと思っている)。

それを聞くと、セルゲイ氏は満足そうに頷き、シートに深く座ると、ぶるんっとエンジンをかけた。

 

と、いきなりアクセルを踏み込む。我らの不意を突く急加速。左右にGを感じるハンドリング。流れる景色。

コレである。想像を裏切らない爆走タクシーである。とりあえずシートベルトを探したが、案の定そんなものはない。

 

しかし、ナメてもらっちゃ困る。こちとらインドの強引グ・マイウェイ運転で諸々の感覚が麻痺しているんだぜ(滞在はたった2日だけど)。猛スピードで揺られながらも「案外突っ込まねえな」などと余裕綽々である。

途中、セルゲイ氏が「ワンミニッツ」などと言って車を止め、路肩で立ち小便をしたものの、道路は比較的空いており、順調に進んだ。セルゲイ氏の快速運転もあって30分ほどでホテル「ペトロ・パラス」に到着した。

もう少し飛ばせたな、などと考えて、ふと、インドで人生観を変えられていることに気づく。人生観というか、タクシー観というか。

 

話は逸れるが、ロシアにおいて、インドよりカオスなのはそこらの車体である。

ケルヒャーのCMのごとくドロドロに汚い車は可愛い方。リアパンパーが欠けたまま走行する車、割れたパンパーをガムテープでガチガチにテーピングした車、ボンネットが欠けて中が見えている車(どうしたらそんな壊れ方するんや)など、物を大切にするロシア人たちにホッコリさせられる。

こういうぶっ飛んだ合理性が癖になる。「一方ロシアは鉛筆を使った」的発想。

この楽しさは行ったことのない人に伝えるのは難しいのだが、次回より、とっても楽しいサンクトペテルブルクの観光の様子をお届けしよう。

 

続く。

GW旅行(モスクワ、シェレメチェボ空港国内線Ruvlevラウンジ)

インド編からの続き。

 

インド人を満載したアエロフロート機は、パキスタン上空を大きく迂回し、モスクワへと飛んだ。印パ情勢の悪化により、パキスタンが民間機に対し領空内の飛行を禁止したためである。

飛行時間が多少長くはなるが、こればかりは仕方ない。仕方がないのは理解する。

 

さて、アエロフロートといえば美人CAである。

CGのようなロシア美女がニコリともせず、アンドロイドのごとく正確さで機内食を配り歩くディストピア感が堪らない(誇張)。色々と中二SFな妄想が捗る。

 

うっとり眺めていると、ふとインド発便の方が、日本便よりもCAにヤリ手BBAっぽいCAが多いことに気づく。

きっと手強いインド人をうまく往なす必要があるのだろう、と悪意のある推測をしていたが、実際はインド人は皆おとなしい。CAの言いつけをよく聞き、シートベルト着用サインが消えても、自由に動き回ったり騒いだりしない。

やり手BBAが多いのはたまたまか、と認識を改める頃、モスクワ、シェレメチェボ空港に着陸した。

 

タラップが接続され、ドアが開くと、ビジネスクラスのお客様から降機を開始する。

タラップの前には、「BUSINESSES 」と書かれた特別なバスがビジネスクラスのお客様を待っており、エコノミークラスの客が一緒に降機ないように、CAが通路の先頭でガードする。エコノミークラスの客は、ビジネスクラスのお客様が全員バスに乗り込むまでは降りられないのだ。 

飛行機は厳密な縦社会である。多く金を払った方が偉いのだ。格安航空券の客など奴隷船である。

 

と、奴隷船の中から1人のオッさんが、通路で待つ人々を押し分けながら進み出てきた。そして、イライラした調子で「通してくれ」と CAにゴネ出した。

「乗り換えまで1時間しかないんだ、通してくれ!」

そう言い放つと、オッさんはCAの壁を乗り越えて降りようとする。

 

いざ、ヤリ手BBAの出番である。

BBACAが若CAに指示を出し、ディフェンスの壁を厚くした上で、客をひと睨みし「ノー!1時間もあれば十分です!」と無慈悲に断る。ニェットと言わんばかりの頑なさ。

「飛行機に遅れてしまう!」「ノー!」「通してくれ!」「ノー!!大丈夫だから待ってなさい!」「・・・。」

取りつく島もないとはまさにこのこと。オッさんもしつこく繰り返したが、最後はBBAに根負けして黙ってしまった。

 

ビジネスクラスの最後のお1人様がやっとお降りになると、我々エコノミーの番である。

ディフェンスCAがスッと道を開け、同時に駆け出すオッさん。バスだから走ったところで変わらないんだけどな。

BBAに「サンキュー、バイ」とお座なりに見送られながら、タラップを降りた。空気がピリッと冷えている。

バスで運ばれながら、駐機場に並んだアエロフロート機を眺めた。銀色の機体さえ、淡い色合いの太陽を反射して寒々しい。

 

入国審査には既に20人ほど並んでいた。

ロシアの入国審査は時間がかかる。気難しそうな審査官が、パスポートを隈なくチェックしたり、ルーペのような器具でビザを見たり、とにかく簡単には通してくれない。

BBA CAは何を根拠に1時間もあれば十分と言ったのか。あのオッさんは間に合ったのだろうか。

 

横の列では「Kazakhstan」と書かれた揃いの赤いジャージを着た少女達が、何やらクスクス笑い合っていた。新体操の選手だろうか、皆ぴっちりとお団子を結っている。ザギトワ系。

前に並んでいるのは、茶色の外交旅券の日本人女性。Diplomatsレーンがあるにも関わらず一般レーンに並んでいるのは連れがいるためか。(別に、混んでるんだからあっち行けとかは思っていない。)

 

そうこうするうちに、我々が並んでいたレーンが閉まってしまった。苦そうな顔をした職員が出てきて、我々、非ロシア人たちをRussian citizensの列に連れて行く。

良いのかよ?と緊張しながらパスポートを見せると、入国審査官はつまらなそうに溜息をつき、面倒臭そうにハンコを押してくれた。良いのかよ。

 

無事に入国し、次に向かうのは、シェレメチェボのBターミナルである。Bターミナルからは、国内線が発着しているのだ。

案内に従い、途中「対独戦争勝利記念日」の飾りのある動く歩道に乗ったり、電車に乗ったりしてBターミナルに到着した。全部で10分くらいか。案内は割と親切である。


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この階段を降りた先に、Bターミナル行きの電車乗り場がある。

 

しかし、飛行機の時間にはまだ早い。Bターミナル入ってすぐ、Ravlevラウンジでオヤツにしよう。我々は、Deltaの上級会員資格で入る。

 

 

Ruvlevラウンジは、とても長いフードカウンターが名物で、ロシアのベストラウンジにも選ばれたとか。国内線ターミナルなのに、ハムなどのコールドフードやスープ、パン、ケーキやクッキーなど大満足のラインナップである。甘党としては、スイーツの充実度合いがけしからん。

ワールドカップの時に作られたとのことで、まだピカピカ、トイレも清潔(モスクワは空港ですらトイレが地獄の汚さだったりする)。

 

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フードカウンターには、お酒もスイーツも充実。カウンターの長さは50メートルくらいある。

 

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写真ではわかりづらいが、玉ねぎ型の洒落たデザインである。

 

カフェラテを淹れ、ヨーグルトやクッキー、ブリヌイ、ミルク粥などを頂く。ミルク粥はほんのり甘くて好みである。私はミルク粥が大好きなのだが、スープと思って蓋を開けた時のトキメキと言ったら!まさかあんな家っぽいモノが食べられるとは。夫によると、ハムやチーズもおいしかったらしい。


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けしからんフードたち。こうして見ると、乳製品と炭水化物しか食べてない。


オヤツをガツガツ食べて1時間ほど潰し、定刻、サンクトペテルブルク行きのアエロフロートに搭乗した。

機内では、メーテルみたいなCAの美女が、無表情で安全デモをするのが圧巻であった。救命胴衣を膨らます時もピクリとも表情が崩れない。

機内食として、噛みごたえのあるサンドイッチと、小ぶりな林檎が1人1個配給された。

 

ロシアに来た。コレがロシアである。

 

続く。

GW旅行(インド、Select City Walk、ミールス食べ放題Suruchi)

インド編の続き。

一泊しかしてないインドに何記事書くつもりだ?いや、これがインド編最後である。

 

 

Indian accentでの食事の後は、もともと映画館に行くつもりだったのだが、残念ながら、ちょうど良い時間に上映がなかった。わざわざインド国歌までマスターして行ったんだけどな。

仕方なしに、インドで今1番ナウいと評判のショッピングモール「Select City Mall」に向かった。


特に買いたいものはなかったので、冷やかし半分で見て回っていたのだが、ふとあることに気がついた。

多くのインド人は、日本人と比較して、身長の割に足が大きいのである。それなら、売っている靴のサイズも大きいに違いない。


私は足が大きく、日本ではサイズの合う靴がなかなか無いのである。24.5センチで少しキツいくらいなので、特別に大きいというほどでもないが、日本の靴はサイズが合わないことも多い。あったとしても少し窮屈である。

そんなわけで、欧米に行くと必ず靴を買うのだが、物価の安いインドで靴が買えるなら非常に嬉しい。お財布大喜び。


そこで、試しに「CHARLES & KEITH」に入って店員にサイズを伝えると、「オフコース、いくらでもありますぜマダム」と頼もしい答えが返ってきた。

そうして出してもらった靴が少しきつかったので、さらに大きいサイズを所望すると、またもや「ありますぜマダム!」と出してくる。

なんと素晴らしい、夢のような世界!

ウキウキと何足か試着して、オレンジ色のローヒールを購入した。4,500ルピー。ちゃんとした革で、これは安い。さすが凄インド。


靴をゲットしてホクホクしながら、さらにショッピングモールをウロつくと、喉が渇いてきた。モール内のカフェは混んでいたので、近くにあった「Junkyard Cafe」に入る。

夫はビール、私は生姜入りの生搾りオレンジジュースをいただく。ジュースは少しぬるいが、甘くて生姜辛くてうまい。失敗したと思ったのは、生姜が入っていたため、もともと暑さで熱を持っていた体が、さらに熱くなってしまったことである。

また、冷静に考えると、この生搾りジュースや、前日の生の玉ねぎは避けるべきだったかもしれない。幸い腹は壊さなかったが。

 

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生搾りオレンジジュースと、インドの上級国民様。


カフェでしばらく体を冷やし(冷えなかったけど)、晩ごはんを食べに向かった。


ベジタリアンミールス食べ放題の店Suruchiである。

ここも、まあカレーといえばカレーなのだが、そんなこと言ったら日本料理は全部醤油味だし、「は?ラーメンなんて全部同じでしょ?」と言ったら怒る人もいるだろう。インドは全部カレーというのは乱暴なのだ。(まあカレーなのだが。)

 

さて、ここでは、パンジャーブ地方グジャラート地方など、インドの色々な地域の料理が食べられる。(はい全部カレーです。)

我々が頼んだのはラジャスタン。この地方はパキスタンと国境を接しており、砂漠化する前には、インダス文明が栄えていた場所らしい。ラジャスタン料理は、パンジャーブグジャラートと比較して辛いらしいが、別に食べられないほどではない。

 

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インド薬味いろいろ。ここにも生タマネギ。

 

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ミールス。この後パンとか炭水化物も色々出てきたのだが、手が油でベトベトで写真どころじゃなかった。

 

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バターミルクキャラウェイが浮いてて、しょっぱい。

 

上の写真のようなものが、ストップをかけるまで延々と出てくる。お得感があるが、「もういらない」と言うと、店員が悲しそうな顔をして「オーケー、もっと食べられるよ?」と勝手におかわりを盛ったりして、まあ調子に乗って食べすぎた。しばらく気持ち悪くなった。うまかったけど。

これらの料理は日本にあるインド人が経営しているインド料理店の味とほぼ同じであった。例え食文化の異なる日本であっても、日本人好みに妥協したりはしないらしい。

写真は撮らなかったが、トウモロコシのモチモチのパンに、きび砂糖と油をドバドバかけたものが背徳的な旨さだった。カロリーの高いものにマズいものはない。

ちなみに、サーブしてくれた店員は、ターバンを巻いた陽気なインド人。「ジャパーン?アリガード、☆♪※◯~」などとよくわからない日本語でオモテナシをしてくれる。いいぜ、面白いぜインド人。ていうか日本語も話せんのかよ、インド脳すげえな。

 

晩飯の後は空港に向かい、アエロフロートでモスクワへ。

夫がDeltaのゴールドメダリオンを持っていたため、ラウンジでシャワーを浴びようと試みる。しかし、学校のプールにあるような剥き出しのシャワーしかなく、さすがにコレはどうかと思い、たまたま持っていたプライオリティパスで、別のラウンジに入った。こちらは必要にして十分な設備で、インドの汗と埃をロシアまで持ち込まずに済んだ。

シャワーを浴びると、ちょうどボーディングが始まっていた。

ゲートに向かい、スッチーが長身美女揃いのアエロフロートに乗り込んだ。

 

 

おまけ。

「インドに行くと人生観が変わる」とよく聞くけど、さすがに1泊では全く何も変わらなかった。まあゼロに何かけたところでゼロなので、何日いてもそんなに変わらないんじゃないか。

 

続く。

GW旅行(インド、Indian accent)

インド編の続き。

 

今回、先が長いので、ディープインドには立ち入らず、とりあえず上澄みだけ見て満足しよう、というのが大前提である。インドの澱みで腹を壊し、旅行の間トイレに立て籠もるような事態は絶対に避けなければならない。絶対にだ!

 

そう、インドは感染症の宝庫と言われている。誰が言っているかって、外務省がそう言っている。お役所というのは得てしてコンサバだから、そう言うからにはそれなりに根拠があるんだろう。


私の周りでも、インドで腹を壊したという話は非常によく聞く。知人の中には、生水を警戒し、歯磨きにミネラルウオーターを使うことは勿論、シャワーを浴びる際も水が入らないように口にガムテープを貼ったという御人もいる。そこまでしたにも関わらず、彼は腹を壊したらしい。ガムテープをわざわざ持って行ったのか?という疑問はさておき、インドの菌の強さには戦慄を覚える(まあ食べ物に当たったんだろうな)。

どうせ物価も安いし、「安い美味い」より「高くて清潔」である。

 


というわけで、インド2日目は、まずホテルにて、清潔で美味しい朝食を取った(全部カレーだ)。

そして昼は、インドの超高級レストラン、Indian accent。コレはまあ、衛生重視というわけではなくて、ちょっと食べてみたかっただけだ。


この店、アジアのベストレストラン50入りの実力派で、2人で2000円も出せば豪華な食事ができるインドにおいて、1コース約5000円(税別)もするのだ。他にワインペアリングをつけると倍の値段となる(しかも酒は税率も高い)。

 

さて、高級な、最先端のインド料理とは一体どんなものだろう?全くイメージが湧かない。

日本でインド料理といえば、何はともあれカレーであり、ナンであり、激安ではないものの高級でもなく、またそれほど凝った料理でもないがウマイ。食べると力が漲り、たまに無性に食べたくなる。

一方、カレー粉というのは、どんな食材でも等しくカレー味にする魔の調味料である(どこぞのレンジャー部隊では、カレー粉のみを持ち、無人島で蛇やトカゲを狩りながら生き抜くサバイバル訓練があるとか)。高級インド料理とはいえ、カレー粉を使ってしまえば、どんな高級食材もただのカレーに堕落してしまう可能性もある。

 

それでは実際、どのようなものだったのか。

結論から言えば、びっくりするほど洗練されており、味の幅が広く、美味しかった。その美味さ、インド料理観が変わる程である。

チャパティのごとく平たく言ってしまえば、全てカレー味ではあるのだが、食材や調味料の使い方に気が利いており、カレーの世界の奥深さを感じさせる。そして、我々はベジのコースにしたのだが、肉を使っていないとは思えない謎のUMAMIがあった。

ついでに加えておくと、店員は皆インド風イケメンである。少しエキゾチックなセンスの良い空間で、清潔なインド人のサービスを受けるのは、少しフェチというか、プレイ感がある。

 


というわけで、これより写真とともに料理を紹介する。

とはいえ、インド料理リテラシーが低すぎるので、「うまい」「カレー風味」程度の貧弱なボキャブラリーでお届けすることを先に断っておく。また、使っている食材もよくわからない。一応サーブする際に、料理の説明はしてくれるのだが、その分野の単語が全くわかりまへん。

 

まずは前菜、ブルーチーズを丸めて味付けで焼いたやつ。ワインはロゼのスパークリング。

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ブルーチーズのクセがそれほどなく、少し素朴な味。「フランスでは農家の子どものオヤツとして、日本でいうお焼きのように食べられています。」とか言われたら信じそう。うまい。

 

トマトのスープ
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平たく言えばトマトカレースープ。なのだが、複雑な奥深い味。とても美味しい。ベジでどうしてここまで滋味豊かなのか。何を使っているのか全然わからない。

 

マサラドーサ
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マサラドーサとは、一般的にはクレープみたいな生地にカレー味のジャガイモが包まれている、素朴な料理である。こいつは、もはや全く原型を留めていない。

フワフワとした淡い味のシロモノがレンゲくらいの大きさの匙にのり、パリパリの小麦粉系食品を振りかけてある。何か美味しい液体をメレンゲ状にしたものなのだが、またしても何を使っているのかわからない!(ベジだから卵白使えないし。)

オシャレな味。もっと食べたい。

 

サツマイモのソテー
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長細い筒状のものがサツマイモで、赤いのは苺、まろやかなカレー味のピューレが下に敷いてある。上にバルサミコ風味のソースがほんの少しだけ振りかけてある。

この料理のポイントは苺。以外な組み合わせだが、少し甘めのカレー味に、スッキリとしたアクセントとなって美味。ほー、と唸るおいしさ。口の中が幸せである!

 

薄切りのジャガイモとチーズを積み重ねたラザニアのようなもの、ワインはボルドーの白。
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もう上の説明だけで美味いことが容易に想像できるだろう。実際、ジャガイモとチーズは鉄板の組み合わせである。チーズはカマンベールを塩辛くしたような感じ。うまい。家で作れそう(失礼)。

ちなみにコレはカレー風味ではない。

 

パプリカに、甘いカレー味のソースで和えたカッテージチーズを詰めたもの。ワインは南アフリカピノ・ノワール
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とろりと甘いパプリカと、優しい味のチーズが合う。下には、何を使っているのか不明だが、優しいカレー味のまろやかなソース。パプリカと言ったものの、大きさ的には日本で言えば熟成させたピーマンっぽい。

 

アミガサタケの中に、細切れにしたキノコを詰めたもの、ワインはチリのメルロー
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要はキノコ in キノコ。菌類が手を取り合ってどこまでも行けるウマさ。

キノコの旨みがぎゅっと凝縮されていて、満足感がある。これなら肉など食べる必要はない。美味しい。意外と米に合いそう。

 

お口直しのシャーベット

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見た目に反してしょっぱい!マサラ風味の梅干し味。私は梅干しが苦手なので、イマイチだった。梅干しスキーの向きには堪らないであろうな。

 

平焼きパン、中にはバジルのような葉っぱ。
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見たまんま、小麦粉をこねて焼いた味。葉っぱが爽やか。アツアツでうまい。ツマミ系。

あともう一枚、キノコの入った同じようなパンが付く。こちらもツマミ系。

 

何かの葉っぱのコロッケにスイートコーンのソースをかけたもの。ワインはキャンティクラシコ
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スイートコーンのソースは、甘めのコーンスープのような味。コロッケ中の葉っぱはペースト状になっていて、トロトロとした舌触りと衣のサクサク感、そこに絡む甘いソースがすげえ合う。子供たちの大好きな味。

 

ガーリックナン

ここで、少し量が足りなかったので、ガーリックナンを追加した。写真はない。

日本のカレー屋にあるドロップ型のものではなく、渦巻き状に層を作ったタイプ。ニンニクの効かせ方が上品でうまい。

 

デザート、左からアーモンドのフワフワした何か、アイスクリーム、何かのタルト。インドのデザートワインSulaとともに。
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1番左は、カリカリのスライスアーモンドをメレンゲのようなフワフワのもので和えてあるのだが、やはり何を使っているのか不明。ガッツリ甘くてうまい。

真ん中は普通のアイスクリーム。優しいキャラメル味。

右のタルトは何故か甘露飴の味がした。原料何使ってるんだろう?これもガッツリ甘くてうまい。

 

最後に謎のお菓子。左上から時計回りに、しょっぱい何か、ゴマ風味のグラノーラのような何か、ドライマンゴー、謎の甘酸っぱい粒(説明になってない)
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これはまあ、ちょっと独特だな。少しだけ食べて、ほとんど手をつけなかった。

右上の赤紫のお菓子だけは美味しかった。ゴマ風味のキャラメルでナッツを和えたようなもので、ポリポリかじる程に味わい深い。

 


これで料理が3,500ルピー、加えてワインペアリング3,900ルピー、プラス税。インドなのになかなかのお値段だが、日本でこういうタイプのインド料理は食べられないので良い経験になった。

 

なお、インド人店員曰く、インド料理はスパイシーだからワイン・ペアリングが難しいのだが、ここの料理はミドルスパイシーなのでなんとか合わせられるのだとか。

個人的な感想としては、ワインと料理は合わなくはないものの、とはいえマリアージュのようなものはなかった気がする。別にワイン・ペアリングは付けなくても良いかもしれない。高いし。まあ、酒を目の前にして飲まないという選択肢はなかったのだが。

 

 

おまけ。

初めて訪れたインドは、動物天国だった。

干支の動物のうち、5つ、野良犬、野良牛、野良馬、野良猿、野良鳥に遭遇した。

他にネズミはきっといるだろうし、ベンガルには虎もいるし、インドのヘビ使いというくらいだし、さらに核実験で放射線を浴びてドラゴンが爆誕するとか、まあ何言ってんだか全然わかんねえな。

 

続く。