日日是女子日

細かすぎて役に立たない旅行ガイド

再びフランスへ。美食という名の胃袋酷使の旅。

と、大そうなタイトルで始まったのだが、「リヨンと言えばポール・ボキューズ」みたいな面々に最初に断っておくと、そんな上等な店には一件も行っていない。せいぜい庶民の贅沢レベルである。(ついでに、このエントリでは機内食とラウンジ飯しか出てこない。)

 

ストの嵐吹き荒れるフランスへ

さて、ゴールデンウィークの旅行で色んな意味でフランスにノックアウトされ、また行きたいような、もう2度と行きたくないような複雑な感情を持つに至った我々だが、その半年後、フランスへの旅立つに至ったのは今思えば思考停止としか言いようがない。

そもそもの発端は、たまたま夫が静岡発パリ行き(ただし上海経由)の安いチケットを発見したことに由来する。ハイシーズンにも関わらず1人往復7万円(税金、サーチャージ込)。恐ろしく安い。例え静岡に住んでいなくとも、我が家の家訓「安いは正義」で言えばコレは正義も正義、大正義巨人軍である。

よく考えると静岡空港発というのもなかなか便利そうである。静岡空港までは車が便利なようだが、首都圏からは高速を使えばそれほど遠くもない。駐車場は何日停めてもタダである。年末年始の混雑の中、羽田なり成田まで重い荷物を引き摺って行くよりは、家の前から車で出た方が楽なのではないか。

年末年始にとりあえず海外に行きたいだけの我々は、行きの手段だけでフランス行きを決めた。

そういえばパリはこの前行ったし、メインはリヨンにするか。深く考えず、サクサクと以下の旅程に決まった。

12月27日 飛行機(富士山静岡空港ー上海浦東空港、中国東方航空

12月27日 飛行機(上海浦東空港ーパリCDG、エールフランス

12月28日 高速鉄道(パリーリヨン、TGV

     ※リヨン4泊

1月1日  高速鉄道(リヨンーパリ、TGV

     ※パリ1泊

1月2-3日 飛行機(パリCDGー上海浦東空港、エールフランス

     ※上海1泊

1月4日  帰国     

 

これが旅行の約3ヵ月前である。

 

それなりに楽しみに待っていたところ、年末も差し迫った12月、マクロン大統領の年金制度改革に反対するストライキがフランス国鉄中心に始まった。ちなみに、我々がパリーリヨン間で乗車予定のTGVはフランス国鉄SNCF)の新幹線である。

出発日が近づいてもストの嵐は止む気配はなく、インド旅行直前の印パ関係悪化韓国旅行直前の日韓関係悪化に続き、3回連続でニュースの現場にコンニチワする旅となってしまった。不謹慎だが多少楽しみでもある。

 

 

富士山を背に日本を発つ

さて、そうして訪れた12月27日、旅行の幕は切って落とされたのである(大袈裟)。

この日は平日ということもあり、東名高速はガラガラで静岡空港まで富士山を眺めながらの快適なドライブを楽しんだ。何しろ休日ドライバーと「わ」ナンバーがいない。ペーパードライバーの謎の動きに混乱させられることもなく、車間の意思疎通がスムーズである。まあ、スタート地点にも立っていないこの段階では、これくらい順調に進んでくれなきゃ困る。

 

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目の前には雪の富士山。地吹雪がここからも見え、すげえ寒そう。

 

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いい天気。空港周辺は一本道でわかりやすい。

 

さて、静岡空港は正式には「富士山静岡空港」という。山梨県民がどう思っているのか気になるところだが、まあ良い。静岡名産品がたくさん売っていたり、カードラウンジでお茶が飲み放題だったり、空港というよりパーキングエリアのような雰囲気が漂う。


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カードラウンジのお茶。当然静岡茶かと思いきや、産地が書いていない。Webページにも「茶処静岡らしい豊富なお茶」としか書いてないので色々お察し。


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富士山をバックに東方航空を眺む。

 

この後、紆余曲折すったもんだはあったが、なんとか無事に離陸した。本題ではないので詳細は省くが、静岡発で安いチケットが手に入るなら、また使っても良い(上から)。

 

 

上海で汗をかき、尻を洗う。

我らが中国東方航空便のエアバス321機は、上海浦東空港にコツン、と着陸した。イメージに反するソフトランディングである。

上海で乗り換え、我々はパリに向かうのだ。

しかし、その前に浦東空港でやらなければならないミッションが2つあった。ラウンジでシャワーを浴びることと、そして上海ーパリ便で通路側の座席を確保することである。パリまでのフライト時間は長いため、どちらも超重要である。

座席に関しては、我々は東方航空経由でエールフランスの激安チケットを購入していたため、Web上で座席予約が出来なかった。そのためか、3人並びの窓側席と中央席という、長距離便では絶対に避けたい座席が選ばれてしまっていたのだ。日本のチェックインカウンターでは「システム上、座席変更ができません」と言われてしまった。

座席変更は制限区域外のエールフランスのカウンターに行く必要があり、わざわざ中国国内に入国する必要があった。このあたりの経緯は長くなるので後述するが、とにかくカウンターで美人スタッフに掛け合って、無事通路側座席を2つゲットした。美人スタッフは長い睫毛を揺らしながらラウンジへのインビテーションも書いてくれた(プライオリティ資格を持っているので)。

そうして再び出国した。うろつき回って汗だくである。

とりあえず、ラウンジでシャワーを浴びなければ。

 

浦東空港のビジネスラウンジは、JALエールフランスだけ別になっている。恐らく口うるさい日本人客と面倒臭いフランス人客をまとめて面倒見てしまおうという魂胆ではないかと思われる。(やれスタッフが無愛想だの、やれ便所が汚いだの、自分も含め日本人の要求はやたらうるさいとオモイマスヨ。)

髪の毛一つ落ちていない清潔なシャワーで尻を洗い、そこそこ美味しいラウンジ飯を摂取し、オヤツにペンギンちゃんのマシュマロをいただいているうちに時間となった。

 

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ラウンジのシャワールーム。さすがにまともなクオリティ。タオルも清潔。

 

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ラウンジ飯。まあ悪くない。やたらとタピオカ入りココナッツミルクを猛プッシュされたが、味は別に普通である。

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ペンギンちゃんのマシュマロ。


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突然スタッフが配り始めた冷凍ピザ。アメリカ系航空会社の客もいないのに、すごいホスピタリティである。

 

さて、我々が乗るのは2階建てのレア飛行機、エアバス380である(座席は1階部分だけどな)。ボーディングブリッジから見ると、窓が2列に並んでいて盛り上がる。

が、乗ってしまえば普通のジャンボジェット機である。

エールフランスは2度目である。機内食は普通に美味しいのだが、朝食が甘党仕様である。「パン2種、フレンチトースト(甘い)、フルーツ(甘酸っぱい)、ヨーグルト(甘い)、オレンジジュース(甘い)、ホットチョコレート(甘い)」と、パン意外全部甘いラインナップである。ちなみに、もちろんジャムもついてくるので、やりようによっては全て甘いものにもできてしまう。逃げ場がない!

 

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機内食その1、夜食。コールスロー、パスタ、チーズ、ココナッツムース、普通に美味しい。


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機内食その2、朝食。甘党なので実はけっこう好きな感じである!

 

座席を通路側に変更できたおかげで、機内はかなり快適に過ごせた。珍しく熟睡でき、あっという間にパリに着いた。

 

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 CDGのあの有名なグルグルターミナル。

 

シャルルドゴール空港からリヨン駅(パリにあるけどリヨン駅)まではバスである。車内には日本人が多くおり「あー、風呂入りてぇ。」などと日本語が聞こえてきた。我々は上海で既に尻を洗っており、優越感に浸りかけたが、瞬間、我々が単に無駄に遠回りしているだけであることに気づいた。日本からの直行便に乗った人たちと最後に風呂に入ってからの経過時間にはそれほど差がない。優越感も何も彼らの尻と我らの尻は同程度の汚さである。

 

リヨン駅の前では、ところどころにマイクを持ったレポーターがいた。朝のニュースでストの様子を伝えようというのか。ニュースで見たフランスに自分がいると思うと、これから鉄道に乗ることも忘れてワクワクした。

 

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早朝のリヨン駅。リヨンに向かう高速鉄道が発着する。

 

駅中のピエール・エルメでいそいそとショコラショー(ホットチョコレート)を買い、ベンチに座って電車を待った。駅のホールにはピアノが置いてあり、薄汚れたバックパッカーがやたらと上手く「パイレーツ・オブ・カリビアン」のテーマを弾いていた。せっかくなのだから、もう少しパリっぽい曲を弾けば良いのにと思うが、そういえばパリっぽい曲って何だろう。「パリは燃えているか」など弾かれてもシリアス過ぎるだろうか。

 

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ピエール・エルメのショコラショー。人によっては粉っぽく感じるかもしれないが、個人的には濃厚で超うまい。おかわり希望。

 

運良く、我々のTGVはストの影響もなく時間通りに発車した。

さぁ、いよいよ美食の都、リヨンである。(タイトル負け甚だしい終わり方)

 

続く。

 

 

※上海浦東空港での紆余曲折(別に大して興味もないだろうが、一応下に書いておく。)

ボーディングブリッジを降り、東方航空の乗り換えカウンターに着いた。既に深夜のため10人ほど立てそうな幅のカウンターにスタッフは1人しかいない。前にいたスタッフに座席を変更したいと言うと、とりあえず並べと言われた。順番待ちの行列は長かったが「スカイプライオリティ」資格を大いに活用し、グイグイ進んでくる中国人を押し除けてカウンターにたどり着いた。

「席を変えてほしいんですけど」と静岡で発券したチケットを見せると、グランドスタッフは不機嫌そうに「ここは東方航空のカウンターよ!エールフランス便の席なんて知らないわ!(意訳)」と言い終わるや否や「ネクスト!!」と言い放った。惚れ惚れする仕事のスピード感(皮肉)。東方航空とのコードシェア便であっても、エールフランス機材の座席は変更できないということらしい。席を変えるにはエールフランスのカウンターに行かなければならないようだ。

しかし、周りを見渡してもそれらしきものはない。離れたところに立っていた空港スタッフに聞くと「エールフランスのカウンターは、エスカレーターを降りてターミナル1に行って!」などと言う。エスカレーターを降りた先がターミナル1かと思って行ってみると、ターミナル間移動の無料地下鉄(何ていう名前なんだろう)のプラットフォームだった。これまで何度も浦東空港を使ったが、こんなものに乗った記憶はない。設備もどことなく真新しく、拡張された離れ小島だろうか、と思うも空港全体の案内図もなく、浦東空港のホームページにもなく、結局最後までよくわからなかった。

 

ターミナル1に来てはみたものの、あるのは東方航空のカウンターだけで、エール・フランスのカウンターなどどこにもない。空港スタッフに聞けば、エールフランスカウンターは一度入国しなければならないらしい(この段階ではまだ中国国内には入国していなかった)。確かに、浦東空港では外国の航空会社の乗客は入国せずに乗り換えられない仕組みになっており、考えてみれば制限区域内にカウンターなどあるはずがないのだ。

まだ時間もあるため、入国してみることにした。入国して、エールフランスのカウンターに行って、それでも通路側座席に変更できないと言われれば、フライト中窮屈でも諦めがつく。

入国審査では、私の指紋を読み取ると同時に端末がフリーズし、普通なら30秒で終わる審査に5分以上かかった。ふふふ、私の指紋にはウイルス・コードが組み込まれている。私は日本から送り込まれた人間サイバーテロ装置なのである。(もちろん嘘)

 

無事、入国審査を通過した後、パリまでスルーチェックインではあるものの、バゲッジクレームで荷物が出てこないことを念のため確認した。以前、浦東空港の乗り換えでスルーのはずが、我々の荷物が何故かバゲッジクレームの床に置かれていたことがあったのだ。

バゲッジクレームにはデジタル掲示板が設置されており、画面にはなぜかWindows XPのあの草原の写真が映し出されていた。XPは大昔にサポートが切れており、浦東空港のセキュリティ管理に不安を禁じ得ない。いや、アップデートしろよ。(まさか入国審査の端末にもXPを使っていたりしないだろうな?)

 

エールフランスのカウンターに着いてみると、まだオープン15分前であった。並んで待っていると、向こうにデビアスの広告が見えた。そういえば、バブル期はよく「ダイヤモンドは永遠の輝き」とかいうCMが流れていただが、長いこと見ていない。

 

そうして無事に通路側座席を確保したのである。こうして書いてみると大したことがないように見えるが、浦東空港は広いので地味に大変である。私グッジョブ。