日日是女子日

細かすぎて役に立たない旅行ガイド

ウラジオストク(タクシー編)

空港で、ATMやらSIMカードやら、色々と準備を整えると、だいたい18時過ぎ。

日本でバスの時刻表を確かめてきたから、ちょうど市街地へ向かうバスが出たばかりであることは知っている。Buses | Международный аэропорт Владивосток

 

それでも、空港の外に出てバス停に向かって歩いてみる。

空は広く明るく、淡く澄んでいる。思ったよりも寒くない。

 

掲示された時刻表を見ると、案の定、次のバスまではかなり時間がある。

「残念、バスが行ってしまった」と白々しく一人呟き、予定通りタクシーカウンターに向かう。

特に意味はない。強いて言うならば、旅行者プレイである。

 

タクシーカウンターは空港の中にある。再び入るには手荷物検査と金属探知機の列に並ばなければならない。

下らない一人遊びの代償に舌を打ちつつ、これも旅の醍醐味である。わざわざウラジオストクで、無為なことをする。

 

タクシーカウンターには、不機嫌そうな、化粧の濃い、メリル・ストリープ似の女性がいて、無愛想にスマホでタクシーを手配してくれた。若い頃は美人だっただろう。

料金は先払い。1,500ルーブル

クレジットカードで支払い、「メリル」の言葉を待っていると、焦茶色の古いジャケットにハンチング帽の、風刺画の労働者然としたオッサンがカウンターに来て、何やら大声で怒鳴っている。いかにも関わったら面倒臭そうな輩である。

目を合わせないようにしていると、オッサンを冷たくあしらったメリルがピシャリと言う。

"He’s your driver. “

 

オズオズとオッサンを見やると、人懐こくニコニコしている。

“Chinese? Korean?”と聞くので「ジャパニーズ、ヤポーンカ」と答えると、さらにニコニコして「ダイジョーブネ!」と日本語で答えてくれる。

いい人っぽい。

(車内で聞いたところによると、昔、中古車輸入の仕事でよく日本の富山、新潟に行っていたそうだ)

 

ウェイトヒア、ダイジョーブネ、などと言い、5分ほど待たされ(きっとトイレだろう)、車の前に連れていかれると、グレーのセダンである。タクシーには見えない、普通のロシア車である。

(後で調べたところ、ロシアのUAZというメーカーのようだ)

 

煙草吸うから1分待ってね、などと自由なことを言い、私を車内で3分ほど待たせ、準備万端整ったオッサンドライバーは景気良くエンジンをふかして空港を後にした。

 

途中、「アムールタイガーの銅像」だの「日本車メーカーのディーラー」だの、ローカル感溢れる名所をカタコトの英語で説明してくれた。

埃っぽい高速道路を縦横無尽に駆け抜け(周りの車が2.5列程度で走行しているので、車線が決まっていないのかとよく見ると、単にラインが消えかけているだけで、片側二車線だった。ロシアン自由)、市街地に差し掛かると、オッサンは「シートが取れるか見てくるよ」などと意味不明なことを言って、クネクネの裏道に入り出した。

 

ちょうど渋滞が始まっていたから、抜け道か?と思ったら、見晴らしの良い高台で車を止め、ここで降りろと言う。

 

 

鷹の巣展望台だった。正確には、展望台に向かう路上なのだろうか。

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ウラジオストクの名所の一つである。夕暮れの金角湾にかかる橋が美しい。

冷えてきた空気の中で、ゴールデンブリッジ、と目を細めて煙草を吸う、ドライバーのオッサン。

写真では伝わらないだろうが、旅情をそそる風景ではある。

 

辺りには車がびっしりと停まっていて、自撮りをするアジア人女性が大勢いた。

先のシート云々は、場所が取れるかどうか、という意味だったのだろう。

 

オッサンが煙草一本吸い終わるまで、存分に景色を楽しみ、車に乗り込んだ。

坂を下りながら「帰国の飛行機はいつ?ルースキー島にドライブしつつ、空港まで送るよ。2000ルーブルでいいよ」となかなか素敵なオファーをされるも、ライト乗り鉄的にはアエロエクスプレスにどうしても乗りたかったので、丁重に断った。(結局乗れなかったけれども!)

 

そこからいくつかのごみごみした通りを抜け、びっしりと縦列駐車が並ぶ坂を登ると、わがヴェルサイユホテルであった。

 

重厚な木の二重扉を開けてフロントに向かい、チェックイン。フロントには、悲しげな目をした痩せ型の女性が立っていた。

カウンターがやたらと高いのは防犯用なのだろうか。

 

 

クラシックな鍵をガチャリと音を立てて開けると、部屋は真っ赤であった。

レーニンも真っ青の赤さ、と呟き、一人満足する。

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部屋には、この椅子と机と、古めかしいテレビとナショナルの冷蔵庫(!)、シングルベッドがあるのみ。

がらんと殺風景な部屋だが、実際はとても居心地が良かった。

「異国の古いホテルに滞在しているのだ」と思うと、妙に盛り上がるものがある。

 

荷物を置き、一息つくと、とにかく空腹であった。

 

向かいのスタローヴァヤ「MINUT」で夕食を済ませ(美味しくなかった)、隣の食料品店でロシアビールを買い(103ルーブル、カードがなかなか読み込めなかった)、部屋でダラダラ飲みつつ、不安と興奮の初日は終了した。

 

やはりロシアはたまらんな!!

 

続く。多分まだまだ終わらない。飽きなければ。