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細かすぎて役に立たない旅行ガイド

ニュージーランドドライブ旅(ミルフォードサウンド、オーバーナイトクルーズ編)

GWに片足を突っ込んでしまった今、年末年始の旅行の記事がまだ書き終わっていないことに気づいた。

うっかり気づいてしまったので、今さらながら前回の続きを書く。

 

 

さて、時は遡り、2018年12月31日、ニュージーランド2日目。

キーサミットでのトレッキングは思いのほか早く終わったが、あたりは自然、自然に大自然。時間を潰せそうな素敵スポットは何もない。予定より少し早いが、我らがスバル・レガシーに乗って次なる目的地へ向かった。

 

目指すはミルフォード・サウンド

実は、湖の上で年を越そうという魂胆でオーバーナイトクルーズを予約していたのだ。ミルフォード・マリナー号、1泊2食付、ちょっとしたアクティビティがついて1人500NZDくらい。高い。

 

キーサミットから1時間ほど運転し、ツアー会社の駐車場に着いた。腹が立つほど晴れている。

ここからクルーズの受付までは、尿意を我慢して10分ほどの距離である。テクテク歩いて来たものの、ここにも時間を潰せそうなものは何もない。とりあえず放尿(もちろんトイレで)。

暇つぶしに売店で絵葉書を購入。いかにも「観光地」という感じの、わざとらしく美しい写真の絵葉書を3枚。宛先とメッセージを書きながら乗船開始を待つ。


そうしてジリジリと1時間ほど待ち、やっと乗船の時間が来た。

 

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奥がミルフォード・マリナー号。某おニャン子クラブ会員番号36番をなぜか思い出す。

 


一列に並んで乗り込むと、まずは食堂に集められた。オリエンテーションである。テーブルには、ボトルに入ったぬるい水とグラス、そして各国語の案内が置いてある。

 

リーダーと思しき男性がマイクで説明を始めるが、私の英語力では、早口で何を言っているのかサッパリわからない。しかし、いくつかの断片から判断するに、テーブルの案内と同じことを言っているようである。よしよし、おっけおっけ、任しとけ。


そうして油断していると、今度はスタッフの自己紹介が始まった。やはり言ってることがわからない。案内の紙をひっくり返してみても、スタッフ紹介のようなものは書いていない。

別にスタッフがだれかわからなくても問題はないのだが、周りの白人達はゲラゲラ笑っているのが気になって仕方がない。一体何がそんなに面白いのか。

こういう時に、周りに合わせて曖昧に笑ってしまうのは日本人の美点であり欠点でもあるからして、笑うもんか、絶対笑わんぞ!などと考えているうちにオリエンテーションは終了した。

 

ふと周りの客を見ると、人種が偏っている。有色人種はアジア人のみ。家族連れ1組(日本人)、ヒゲのバックパッカー2人組(日本人)、そして我々(日本人)の5名。要は白人と日本人のみ。中国人もいない。いるとうるさいが、いないと寂しいのが中国人。オークランドにたくさんいた中国人は一体どこに行ったのか。客室に向かう途中、再び乗客を見回してみたが、他に同胞はいなかった。

 

部屋に入ると、そこは絵に描いたような船室である。備品類は全て固定式で、引き出しを押しても、びくりともしなかった。ベッド下には、緊急用のオレンジ色のライフジャケット。ドアを全開にすると自動でストッパーがかかり、壁に固定できる。気分が盛り上がるぜ・・・。

 

感心しながらくつろいでいると、船内放送が流れた。なんとか聞き取ったところでは、アクテビティが開始するので集まれ、と言っている。とりあえず部屋を出て、人の流れに乗って進むと、船後部のデッキに辿り着いた。

 

アクテビティは、カヌーか、エンジン付きのボートから選べるが、自力で漕ぐのはダルいのでボートを選択。赤いライフジャケットを受け取り、腰紐をキッチリ固定する。

ガイドのお兄さん(東南アジア系っぽいイケメン)の案内で、ホンダの船外機がついた小型ボートに乗り込む。

乗客は全部で14人くらい、他にもう一艘ある。全員乗り込むと舫が解かれ、ボートツアーの開始である。世界遺産の絶景の中、湖の上を風を切って進むボートはとても気持ちが良い。

遠く、我々の船を見ると、カヌーが2、30艘、プカプカ浮かんでいた。そのうち、一艘のカヌーが転覆したという知らせが入り、我々のボートもフルスピードで救助に向かった。やっとカヌー組のところに着くと、既に他のボートが救出した後だった。落ちた人には申し訳ないが、実はボートツアーで一番盛り上がったのは、この時である。救助に向かうためにスピードを上げると、皆キャアキャア言いながら楽しんでいた。まあ、無事で良かった。

 

船に戻ると、夕食タイム。席は勝手に指定され、6人がけのテーブルに相席で座る。

我々が食堂に向かうと、既に夫婦連れが1組座っていた。シカゴから来たという、少し神経質そうな奥様と、大雑把な感じの旦那さん。先ほど同じボートに乗っていたのを思い出した。軽く挨拶をして、夕食の開始を待っていると、もう1組の夫婦がやって来た。小柄でかわいい感じの奥さんと、ラインホルト・メスナーみたいなワイルドな旦那さん。イタリア人。タイルの会社を経営しているとのことで、日本のメーカーにも卸しているとのこと。

 

男女に分かれ、合コンのような席順で座ったため(発想がゲス)、うっかりガイジンに挟まれてしまった。

無理矢理書くとこんな感じ。


伊   夫   米

[ テーブル ]

伊   私   米

 

仕方なく、奥様3人で当たり障りない会話をするのだが(これが社交ってやつだな)、私は雑談が苦手である。目的もなく、目指すべき結論もない状態で、一体何を話せば良いのか。どこから来たのか、どれくらい滞在して、どこに行ったのか、当たり障りのない会話をひと通り終えると、ネタが尽きてしまった。

イタリア奥にニュージーランドを選んだ理由を聞かれたので「ペンギンに会いに来た!」と言うと、「あら、ペンギンね!」などと言いながら、アザラシの写真を見せてくれた(ペンギン関係ないじゃん、というのは置いておいて)。写真は2枚あり、メスナーがアザラシにちょっかいを出し、アザラシが怒っている。ワイルド過ぎだろう。

ふと、男性陣を見ると、お互い一言も発さずに「女の人っておしゃべり好きだよねー」みたいな目でこちらを見ていた。好きじぇねえよ、全然好きじゃない。もっとお前らも社交しろ。

 


さて、料理はパンとサラダ、スープがサーブされ、メインはブッフェ式である。ブッフェの開始前に、コック長がマイクでメニューの説明をしてくれる。この時点でデザートは出ていなかったのだが、コック長が「やあ、見てくれよ、素敵なデザートじゃないか!」とキウイジョークをかますと、食堂内がドッカンドッカン湧いた。

最後にコック長は、ブッフェはテーブルごとに順番に取りに行くように、と言った。我々のテーブルは一番最後だった。

「ちょっと損だわね」とイタリア奥。全く同感である。順番を待つ間に、どんどん料理が消えていく。

 


やっと我々の番が回ってきて、急いで料理を取る。料理は普通に美味しかったのだが、普通なだけに正直全く印象に残ってない。ああ、羊肉は美味しかった。さすがに新鮮である。その辺の羊をチョチョイっとドナドナして来たのだろう。(羊肉も熟成するのだろうか、それなら別に新鮮屠殺したてではないのか。)

 


間違えて隣のイタリア奥のグラスを使ってしまい、ごめんねーと言ってる側から再度間違えた時、なぜか爆笑された以外は、もはや会話もなくなっていた。

隣のテーブルでは、バックパッカー日本人が中心となり、何やら下品な話題で盛り上がっていた。よう知らんけど。

 


そしてお楽しみ、スイーツタイム。ニュージーランドの激甘メレンゲ菓子「パブロヴァ」やチョコレートケーキ、クランブルやフルーツなど、メインの料理と同じくらいの量と種類。

今度は我々のテーブルが一番最初である。皆ウキウキとした表情で、大皿にデザートをモリモリに積み上げる。釣られてモリモリにしてしまったが、どれもこれま虫歯になりそうな甘さ。美味しいか不味いかで言えば、甘い。なんとか完食したが、ものすごく口が甘かった。

 


ディナーを終えると、あとは自由時間である。19時も過ぎていたが、空は、まだ明るさが残っている。

船室でゴロゴロし、船内を彷徨ううちに、すっかり日が暮れた。ふとデッキから下を覗くと、アザラシが船に上がり込んで寝ていた。

 


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タマちゃん。左の黒い細長いやつがソレ。

 


南十字星を探したが、それらしい十字の星座が2つあり、どちらが本物かわからなかった。スマホで調べたくても、そこは圏外。同定は諦めた。

 


部屋に戻り、ストレッチャーのようなベッドに横たわる。スクリューは止まっていたが、発電機なのか、小さく規則正しい振動音が気になって寝付けない。いや、少し緊張しているかもしれない、とも思う。

スマホに落としてきた本を読むうちに、いつのまにか眠りについていた。

 


翌朝、食堂で朝食をとり、部屋に戻ると、船は海の近くに移動したらしい。波が高く、船が大きく揺れるので、寝不足の私はすっかり酔ってしまった。そこから下船まで起き上がれなかったのだが、デッキに出ていた夫によると、またアザラシたちがいたらしい。

 


アザラシ。

実は、公式ホームページには「運がよければイルカやペンギンが姿を現すかもしれません。」などと書いてあったが、ペンギンなどどこにもいなかった。いたのはアザラシだけ。

まあ、このあたりのペンギンは、夏にはいなくなるのは知っていた。なので、仕方ない。別のペンギンスポットに期待することにした。

(この期待が裏切られるのは、これまでに書いた通り。)

 


船は昼前に港に着いた。ヨロヨロと這い出す。太陽が眩しい。

大きく伸びをして、車に戻った。

 

 

 

次の宿泊地はワイカワ。再びテ・アナウを経由して南へ向かう。小型船を牽引した車をやたらに見かけた。夏休みは湖でモーターボートで遊ぶ。まるでスネ夫の自慢話だ。きっとあのボートは3人用に違いない。

途中、熊谷市指した案内板が有名なブラフポイントに寄り、トイレに入ったが、地獄の汚さであった。便座に謎の黄色い液体が乗っている。しかも紙がない。

 


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ブラフポイントの熊谷を指す案内板。ここにも中国人はいなかった。

 

 

 

この日の宿は「ワイカワ・ハーバービュー」というペンションである。

そこに着いた時には既に18時を回っており、スタッフらしき人はどこにもいなかった。ペンションの前には「受付は17時まで。それ以降は、xxx-xxxxまで電話してね。」と書いた看板がかかっていたが、携帯電話は圏外。電話できない。

部屋の前に回り込むと、ドアに鍵が刺さっている。このまま入って良いのだろうか。とにかく状況を打破できるもの、例えば公衆電話のような物がないか、周りを見るウロウロするが、何もない。

再び看板の前で途方に暮れていると、隣の民家から、背の高い老人が出てきた。眩しそうにこちらを見ながら「お前さんたちはペンションの客かね?」と問う。そうだ、と答えると、「部屋のドアに鍵が刺さっているから、開けて入るのじゃ。出る時は、鍵をテーブルの上に置いて行ってくれればいいんじゃよ。」と教えてくれた。

親切な隣人に感謝しつつ、部屋に入ると、「何かあったら、17時以降は、xxx-xxxxまで電話するか、お隣のジムに聞いてね!」と書いた紙が置いてあった。あの老人はジムというらしい。サンキュー、ジム。

 


部屋に荷物を置いて、鍵をかけ、車ですぐのところにあるキュリオベイに、ペンギンを見に行った。

 


それにしても、鍵を刺しっぱなしで放置するとは、大らかというかなんというか、すげえ治安がいいんだな、ということはよくわかった。

 


続く。