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細かすぎて役に立たない旅行ガイド

ニュージーランド(ペンギンに会いたい編②)

ニュージーランド、ペンギン記事の続編である。

今回はオタゴ半島のイエローアイドペンギン観察ポイント「ペンギン・プレイス」について書きたい。

 

 

オタゴ半島は、千葉県で言えば鴨川あたりの位置にある。(ニュージーランドの地理は、千葉県でイメージするとわかりやすい。ミルフォードサウンドが木更津、クライストチャーチいすみ市オークランドは柏あたりであろう。)

 

ペンギン・プレイスは、野生のペンギンが見られるツアーを売りにしている、民間のペンギン保護地区である。

1人55ドル払うと、曰く「アザラシや、コガタペンギン、そして我々の目玉であるイエロー・アイド・ペンギン(YEP)を観察する」ツアーに参加することができる。

 

55ドルといえば、日本円で4,000円ちょっと、鴨川シーワールドの1日券を買って、ちょっとしたオヤツを食べてもオツリが来るお値段である。なかなか強気だ。

 

強気なのには、きっと訳がある。

ペンギン・プレイスのホームページを見てみよう。そこにはこんな写真がある。

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近い!近過ぎちゃってどうしよう!かわいくってどうしよう!な近さ。

こんなん見せられたら、期待が高まらない方がおかしい。

これでキュリオベイみたいに遠かったら詐欺だぞ、わかってんだろうな?

(しかし、よく見ると何やら合成写真っぽいような・・・ゴニョゴニョ。)

 

そわそわとチケットを買い、ベンチに座って開始を待っていると、老若男女、白人客がポツポツとやってきた。

10人ほど集まったところで、ガイドのお姉さんがやってきた。

がっちりと太っており、頭にはデカデカと「侍」の刺繍が入ったキャップを被っている。(キャップの後ろ側には「SAMURAI」と刺繍が入っており、漢字が読めないキウイにも親切設計になっている。)

 

最初にガイドに連れて来られたのは、年季の入った狭い講堂である。

「ハーイ!」といかにもガイドのお姉さんよろしく挨拶すると、「みんなはどこから来たのかしら?」と質問する。

「カリフォルニアよ」「イギリスさ」観客が口々に答えていく。

 

ここは「我々はジャパン、サムライの国から来たぜ」などと答えるべきか。しかし、こんなところで日本人だとバレたら「クジラはかわいいから食べてはダメだキウイ!許せないキウイ!」などと面倒なことになりはしないだろうか。

 

迷っていると、隣のおじいさんがモゴモゴと「家から来たのじゃ」と答え、会場がドッカンドッカン湧いたところで話題が変わった。

ワシらはサムライの国から来たのじゃよ・・・。

 

ガイドの英語は早口な上にニュージーランド・アクセントが強く、ほとんど聞き取れなかったのだが、曰く「我々はペンギン・ホスピタルを運営しており、ニュージーランド中の、怪我や病気や飢餓に苦しむペンギンたちを保護して治療後、自然に還している。」「ペンギン・ホスピタルでは、昨年は100匹以上保護した。」「それでもYEPは減り続けており、気候変動や政治的な理由(詳しく聞き取れなかった)でどんどん危機的なものになっている。」

とにかくYEPは貴重らしい。

 

そうして講義が終わり、我々が連れて来られたのは件のペンギン・ホスピタルである。

 

檻の中に、ジッとしているイエローアイドペンギンたち。

初めて近くで見たYEPは、本当に美しく、神々しい生き物だった。なんと素晴らしい鳥!

 

とはいえ、ここは病院。やはり元気がない。

かわいい!とはしゃいで、調子の悪いペンギンたちの写真を撮りまくるのは気が引けた。

どうせこれからいくらでも野生のペンギンに会えるのだ。

早く元気になってね、と願いを込めつつ、ホスピタルを後にした。

 

 

そしていよいよお楽しみ。野生のペンギン観察ツアーのスタートである。埃だらけの古いマイクロバスに乗り込み、観察ポイントへ向かう。

バスも講堂も、全体的にオンボロなのが、ペンギン以外に金を使っていない感じで好印象だ。

よく見ると、バスの側面には日本語で乗車定員が書いてあった。元は日本の幼稚園バスだったに違いない。

 

ガタガタの道を、ギシギシ軋むバスで進んで行く。外を見ると、こんなところにまで羊牧場がある。さすが人口より羊が多い国は違う。隙あらば羊を詰め込んでくる。

羊たちは、口をもぐもぐさせながら無表情にバスを見送っていた。

 

10分ほど走ったところで突然バスが止まり、我々は外に出された。あたりには何もない。

ガイドの後について行くと、木が覆い被さる階段があった。そこを下り、塹壕のようなトンネルに入った。トンネル内は迷路のように入り組んで、薄暗く、狭く、埃っぽい。 

1kmほど歩かされただろうか、突然、海岸に面した掘建小屋に着いた。履いていたスニーカーは、すっかり埃だらけである。

小屋はトンネルと繋がっており、床から1.3メートルほどの高さに、15センチほどの幅でスリットが開いている。スリットから海岸を覗き、ペンギンを観察するシステムである。

 

ふーん、ペンギンいないなーと思って見ていると、ガイドが海岸を指さし、「ほら、ペンギンがいるわ、2羽よ、あそこ」と言う。

色めき立ってそちらを見ると、遥か遠くに白い点が見えた。そこから少し離れて、もう一つ点がある。持ってきた双眼鏡を覗くと、うっすらと白黒のペンギン形が見えた。

 

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中央の白い点がペンギンだ。一応スマホ用の望遠レンズを付けてコレである。

遠い。キュリオベイより倍は遠い。これは詐欺紛いの遠さ。

 

周りを見ると、他の客もモヤっとした顔をしている。腑に落ちない、と言った様子で写真を撮ったり、無言で双眼鏡を覗いたり、どことなく気まずい空気が流れる。

 

と、ガイドは何を思ったか、「皆さん、2羽も見れて超ラッキーよ!YEPは1羽見れたらベリーラッキー、2羽見れたらベリーベリーラッキーなのよ!」などとほざく。

お前、1羽すら見られない可能性もあったのかよ。それで55ドルも取るのかよ。

 

釈然としないまま、終わりの時間が来た。

途中、これまた豆粒のようなアザラシを観察してバスに戻った。豆粒ながら、アザラシは9匹ほど転がっていた。

 

バスに着くと、ガイドは人数を数え「あら?2人足りないわ!」などと慌て出した。

あの入り組んだトンネルで、客が迷子になっていたらコトである。慌てるのも無理はない。

ふと、終わりの時間になっても残りたそうにしていた夫婦客がいたのを思い出した。あの2人がまだ帰って来ていないのでは。

 

しかし、ここからの展開がキウイであった。

"家から来た"おじいさんが、テンパるガイドに平然と「みんないるよ」と言った。それに釣られ、他の人も「誰もいなくなってないよ。」などと言い出す。

ガイドはそれを聞くと、なんと「そうよね、きっと気のせいだわ!」と微笑み、そのままバスを発車させたのだ!

もし本当に2人残されていたら、どうするんだろう。あの夫婦がバスにいるか、怖くて確かめられなかった。

まあキウイはおおらかだから気にしないのかな。

 

適当過ぎるぜキウイ。

 

続く。

 

 

ペンギン・プレイスはこちら↓