ウラジオストク(アエロエクスプレスに乗りたい編)
もう3ヶ月以上前なのだが、ウラジオストク旅行記を書き終わっていなかったので、今更ながら続きを書きたい。
ウラジオストク市街と空港とを結ぶアエロエクスプレスは、海沿いを走り、とても景色が良いという。
行きは乗れなかったので、帰りは絶対に乗りたいと思っていた。
が、結論から言えば、乗ることができなかった。
(これに乗るために、タクシーの運転手の魅力的なオファーも断ったというのに!)
要は駅を間違えたのである。
アエロエクスプレスは、あの有名なウラジオストク駅からは出ていない。にも関わらず、なんの疑いもなくウラジオストク駅に行き、たらい回しにされるうち、1日に5本しか走っていないアエロエクスプレスを逃したのだ。
これ、この有名なシベリア鉄道の駅。ここからアエロエクスプレスは出ていないのだ。
この駅を背に右100メートルくらい、ロシア国鉄РЖДのマークが書いてある近代的な建物がアエロエクスプレスの駅である。
(ちなみに、ロシア国鉄のマークは、西側の方々はうっかりPLDと読みがちだが、無理矢理アルファベットにすればRJDである。)
従って、ここにはアエロエクスプレスの感想は書かず(というか書けない)、ロシア式たらい回しを恨みがましく書いてやろうという魂胆である。
(まあそういうロシアも好きなんだけども)
そして話は帰国前日に遡る。
慎重で注意深い(皮肉)私は、前日、念のためにアエロエクスプレスの時刻表を確認しようと、よりによってシベリア鉄道の駅に向かった。
(だってガイドブックに「アエロエクスプレスはウラジオストク駅発着」って書いてあったんだもん。まさかもう一つあるとは思わなかったんだもん。)
シベリア鉄道の駅に入るためには、コワモテのオッさんが監視する金属探知機を通らなければならない。緊張しながらも無事通過し、インフォメーション窓口を探した。
窓口は、待合室奥の階段でホーム階に降り、トイレを突っ切った先にある。「切符買って電車乗る前にウンコ済ましておけよ」と言わんばかりの造りである。
時刻表をもらうために、窓口のロシア美女に「ダーイチェパジャールスタ、ラスピサーニエ、アエロエクスプレス(アエロエクスプレスの時刻表ください)」と張り切って伝えた。事前に覚えていった表現が役に立ったのだ。
それを聞いたロシア美女は、露骨に嫌そうな顔をした。おまけに深いため息までついた。
それでも美女は、いかにも不本意だという顔で(まあそうだよね)目の前のPCを操作すると、何やら紙に書き込んだ。
そして、素っ気なく私に渡したものは、手書きの時刻表だった。
まさかの手書きw印刷の時刻表ねえのかよwwと思った過去の私をぶん殴ってやりたい。
あの窓口美女は、自分の仕事でもないのに、別の駅から出ている電車の時刻表を、わざわざ調べてメモしてくれたのだ。
手書きの時刻表を入手し、すっかりそこがアエロエクスプレスの駅だと思い込んだ私は、翌日、余裕を持って30分前に駅に着いた。
アエロエクスプレスが発着しない駅に。
前日と同じように駅入り口の金属探知機を通ると、ピーピー、と耳障りな音がした。監視のオッさんが、人を殺せそうなほどの鋭い視線を送ってくる。
おどおどと体を探ると、ポケットから銀紙に包まれたチョコレートが出てきた。ホテルをチェックアウトする際、ホテルスタッフが「また来てね!」とくれたものだ。
Тэхэрэроとチョコレートを見せると、オッさんは怖い顔をくしゃっと崩して笑い、手をひらひらさせて「行け」といった。
そそくさと切符売り場に行くと、既に長蛇の列ができていた。最後尾のおばちゃんに「並んでますか」と手振りで伝えると、あちらに行けという素振りを返された。
そこで、素直に「あちら」へ行くと、そこにも切符売り場があり、先程よりは多少空いている。
そうして後ろに並んで順番を待ったが、5分経っても1人しか進まない。
発車時刻はどんどん近づいてくる。
指でトランクをコツコツ叩いてイライラしている振りをすると、前に並んでいた老婆が順番を譲ってくれた。スパシーバ。
そうして発車5分前に、やっと私の番が回って来た。
「ダーイチェパジャールスタ、カッサ、アエロエクスプレス」というと、切符売り場の女性は無慈悲に「ニェット」と言って上を指した。
その仕草でここでは切符を買えないと悟った私は、急いで上の階に上がり、窓口を見つけて「アエロエクスプレス!」と係員に叫んだ。
すると、係員は無下に「ニェット」と言って右を指した。
この窓口でもないと悟った私は、急いで右に向かい、窓口を見つけて「アエロエクスプレス!」と係員に叫んだ。
すると、またもや係員は無情にも「ニェット」と言い、今度は何やら英語の書かれた紙を差し出した。そこにはこんなことが書かれていた。
「ここはアエロエクスプレスの駅ではありません。アエロエクスプレスは、駅を出て右に100メートル行ったところにあります。」
この時点で発車1分前。もう間に合わない。
力なく「スパシーバ」と答え、重いトランクを引きずって外へ出た。
バス停の方へふらふらと向かったが、空港へ向かうバスを探すのも億劫だった。
(うん、ていうか最初のロシア美女があの英語の紙を見せてくれたらアエロエクスプレス乗れたよね。)
次回ウラジオストク最終回、Gett編に続く。