香港、蓮香居で朝食を
香港といえば飲茶である。
むしろ飲茶以外に何をするのか。雲呑麺か、焼味か。亀苓膏に涼茶、菠蘿包も捨てがたい。って意外とあるな。いや食いもんしかないな。
まあとにかく香港に行ったので飲茶してきたぜ、という話である。
行ってきたのは「蓮香居」、香港の老舗レストラン「蓮香樓」のゲリラ姉妹店である。
(本家に無断で姉妹店を名乗り、しばらく争った後、現在では正式に姉妹店として認められているとのこと。すげえな香港)
蓮香居は、今や少なくなった(らしい)ワゴン式の飲茶店である。
店内を点心の乗ったワゴンが回ってくるので、押しの強い香港人に負けじと群がり、目当てのものをゲット、ワゴンのおばちゃんから伝票にハンコをもらうシステムである。
唐突にラジオ体操を思い出すこの感じ。
店内は混雑しているので、当然のように相席となる。今回も家族連れと、中年男性グループと相席になった。
同テーブルの人々は、互いに知り合いではないようだが、何やら世間話で盛り上がっていた。隣のテーブルの客とまで「それおいしい?」「まあまあかな」といった会話が交わされていた。
香港人は割とフランクだ。
と、家族連れの方のお母さんがこちらを見て、ニコニコと「ジャパニーズ?」と尋ねてきた。そうだと答えると、自分を指さして「香港人」という。
旅行で来たと言うと、我々を飲茶ビギナーと認識したらしい。「あれはもう冷めてるから取ってはダメ」「あれはおいしいから取って来なさい」など、親切にあれこれ教えてくれた。
(お父さんに取って来させた)おススメの点心も味見させてくれた。空気を含んだ糸状の衣に肉や野菜を包んで揚げた、紡錘形の食べもの。咸水角に似ているが、衣が餅ではなく、サクサクでとてもおいしかった。
同じものがワゴンで回ってきたので取ろうとすると、お母さんに「あれはさっき食べたから取らなくて良いわ」と止められてしまった。
このお母さん、とても世話好きな人のようで、手が汚れたらそれを拭く紙までくれた。この紙は、その家族のお父さんが何処より大量に持ってきたのだが、聞けばトイレの手拭き紙だという。
こういう「合理的」な感じは嫌いじゃない。
お母さんに勧められたり、止められなかったりして、ワゴンから取って食べたものは、以下の5つ。正式名称はわからないが、どれもとても美味であった。
- 鶏の足のごはん(米が長粒種なのが良い)
- シウマイ(味つけが素晴らしい)
- 蒸し餃子(プリプリで安定感がある)
- 鶏肉と椎茸の湯葉巻き(味がよくしみた椎茸がたまらない)
- マーラーカオ(我が人生ベストマーラーカオに決定)
なお、お母さん曰く、蓮香居では急須でなく蓋碗でお茶を飲むべきであるらしい。
この蓋碗で飲むスタイル(曰くold style)は蓮香居以外の店では提供されていないらしく、「だからみんなこの店に来るのよ!」とお母さん自慢げ。なるほど良いことを聞いた。
急須と違い、蓋碗は飲む分だけのお湯を入れるので、薄まらずに風味が良いのだという。実際、急須と蓋碗で飲み比べさせてくれたが、本当に違っていて驚いた。
ちなみに、蓋碗からお茶を注ぐのはコツが必要で、お母さんは蓋碗の縁からジョボジョボこぼしてうまくない。
代わってお父さんが見本を見せてくれた。親指、中指で蓋碗を挟み、人差し指で蓋を押さえてパッと90度傾ける。勢いが必要なようだ。
とはいえ、熱々のお茶が入っていると、蓋碗も熱く、しかも満杯だと重いので、どうしてもトロトロとしか傾けられず、ジョボジョボになる。
シロウトは急須で飲むのが無難だろうが、ペーペー香港迷としては是非マスターしたい技ではある。
帰り際、お母さんとその長女に香港観覧車を猛プッシュされた。「たった20ドルよ!ここから歩いてすぐだから、ぜひ乗りなさい、たった15分だから予定も邪魔しないわ!」
なんとなく、大阪のおばちゃんとノリが似てるな、と思った。
広東語覚えようかな。(言ってみるだけ)